内容説明
お伊勢さんの名で親しまれる伊勢神宮は、つねに古くて新しい。朝な夕なの祭典は、千数百年来の民族信仰を純粋に守り伝えてきた。そして20年に一度の遷宮は、日本独自の手製文化を高度に磨き上げ、生命の再生を祈念してきた。まさに神宮こそ日本人の心のふるさとであり、そこには未来を拓く英知が潜んでいる。世界にも稀な聖地といわれる神宮の歴史と、伝統を重んずる日本人の志を論述した好著。
目次
1 神殿の原型
2 鎮座の由来
3 恒例の祭祀
4 遷宮の歴史
5 遷宮の概要
6 神宮の英知
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
343
新年の1冊目はこの本にした。初詣のシーズン伊勢神宮ではどのような事をしているか、興味を持ち読んだ。また伊勢神宮に行って見たくなった。2017/01/01
夜間飛行
192
神明造の原型は高床倉庫だと。つまり神祇と収穫は初めから結びついていたのだ。高倉の前に人が集まり祭(神と人との共食共宴)をする光景を想像した。なるほどこれが仏教伝来以前の日本建築か。著者は崇神天皇期の倭姫命(ヤマトヒメノミコト)を後の「斎宮」と見て、その巡行(東征)の終点・伊勢を東国経営の拠点と推測している。一方、伊勢神宮の神さまは食べ物を頂くことを心の底から有難く感じさせてくれることや、式年遷宮が常に新しい参加を促すことも詳しく述べている。祭事と政治の関わりからマツリゴトを振り返る試みとして参考になった。2024/08/04
ネムル
10
外宮のみの片参りになってしまったが、昨年末にお伊勢さんに行ってきた。そこからの興味で読んでみる。一番の知りたいハコものとしての伊勢神宮について深く描かれていないのが残念だが、紀記に始まり、60回に及ぶ遷宮の歴史、祭祀の数々など、幅広くポイントを押さえることが出来る。遷宮が常に20年ごとで行われているとは思わないが、南北朝の対立時には最長で130年も中断していた。そして、荒廃を見かねて遷宮再開に乗り出したのは皇室でも幕府、武将でもなく、民間の篤志家であり僧尼であった。いつもここぞで強いのは庶民か。2017/01/17
みのくま
9
伊勢神宮は古くて新しい。古いものを20年毎にまるっきり同じものに建て替えていく遷宮というシステムは確かに面白い。そこにはある種日本人の思想の良いところと悪いところが集約されているように感じるのだ。そして、この「20年毎」というのも面白い。旧暦において元旦と立春が20年毎(満19年)に重なるからが理由らしい。つまり暦、太陽の運行、そしてそれに付随する太陽信仰(=世界観)と遷宮は密接な関係があるようだ。これはおそらくプレ伊勢神宮だけでなく、先史時代の円環的な時間感覚や信仰に繋がっている。示唆に富む本であった。2021/11/06
ダイキ
7
図書館。入学準備プログラム。「放っておけば消えてしまう灯でも、それを受け継ぐ人々が努力すれば、”不滅の法灯”となりうるのである。」 2015/02/15