内容説明
発句以下長・短句(575・77)を交互に連ねて36句で巻き終える歌仙こそ、蕉風俳諧の核心をなすものである。永年『芭蕉七部集』に親炙し、連句の実作をも重ねてきた著者が、「冬の日」「猿蓑」「炭俵」の世に言う蕉風三変の代表歌仙を素材に、詩心と詩心が切り結ぶドラマの場としての連句の興趣を再現する。絶妙の挨拶・会釈・笑いに充ちたスリリングな知的ゲームの醍醐味を伝える、安東芭蕉学の会心作。
目次
連句作法
恋は歌仙の花
後の月の恋
夕顔の恋余聞
連句の興の起るとき
深川のあじさい
評釈・はつ雪の巻(『冬の日』)
評釈・夏の月の巻(『猿蓑』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
水紗枝荒葉
1
芭蕉の連俳を精読する本。タイトルに反しこれで連句に入門するのは難しいかもしれない。特に連句のルールはもっとシンプルに解説できるので、知らない方は検索して調べた方がよい。内容自体は非常に面白かった。故事・民俗・時事を適切に引用し、ときに独自研究をまじえながら、驚異的な精度で芭蕉が参加した連句を解体していく。ただ密度の高さゆえに疲れる読書体験でもあった。2024/01/24
山がち
0
連歌入門と思って期待して読んだのだけれども、残念ながらそうではなかった。しかしながら、それなりに面白いものだった。連句を単なる付け合いの文芸ではなく、座の文芸として描こうとしている意識がかなり強く出ていたと思う。月と花の定座というものを中心に、他者との関係をもとに詠んだり譲ったりという細やかな機微が、歌仙全体を分析する中で非常によく出ている。もちろん、付け合い自体の妙というものも一つ一つ丁寧に説いている。連句自体の歴史などはどうしても脇が甘いが、連句を丁寧に読むという方針ではかなり良い入門書だったと思う。2012/04/12