出版社内容情報
【内容紹介】
伊勢神宮や桂離宮などに日本美の極致を見たタウトは、建築家としての鋭い直観と透徹した哲学的瞑想とにより、神道や絵画、彫刻や工芸、建築など、日本の芸術と文化を更に深く見つめた。彼の透徹した眼識力と歴史認識は、日本人が忘却している日本の伝統的精神の復活をうながさずにはおかず、日本人と日本文化に寄せる真情は、読む人の心にせまる。名著『ニッポン』と並ぶ必読のタウトの日本文化論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
22
資本主義社会のいやなものは、あらゆるものがモードの中で消費されて、本当に良い物がまっさきに社会のレースから脱落していくことだ。強者総取りの、金が儲かれば正義という価値観によって、イカモノに覆われて生きる時代はずっと続いているし、今では情報化時代だかなんだか知らないが、ゴミみたいな情報に振り回されて、呑気に本を読んだり、自国の文化を見つめて、そして他国の文化をリスペクトすることも難しくなっている。2024/11/28
くらひで
10
建築家として著名なタウトだが、本書を読むとむしろ文化評論家。3年ほどの日本滞在で、日本人以上に日本の芸術文化の本質を見抜く能力には感心。特に、桂離宮や伊勢神宮を絶賛。明治維新後に西洋化を推し進め、足元にあって高度な完成度を誇る伝統文化を蔑ろにする表層的な世相を批判する。タウトの警鐘は、現代の日本人にも相通ずるところがあり、日本人の民族性はそう簡単には変わらないのかもしれない。2015/12/16
積読0415
7
「模倣によりて美は消失す」冒頭の一文は、読み終えた後でまた味わい深い。我々は彼の言う消失後の世界に生きているらしい。タワーマンションに住み、休日はイオンに出かけ、海外の流行のものですらアマゾンで簡単に手に入る時代を、タウトが見たら発狂するだろうなと思う。上野の西洋美術館に行った後、スタバでお茶するという行為を文化的と思っていた自分は、だいぶ浅はかだっだなぁと省みる。何気にコルビジェをディスる文章に初めて会った気がする。 2019/12/30
グッドバイ
6
建築家ブルーノタウトによる日本文化批評本。日本の伝統文化を称賛するとともに、当時の日本・日本人の多くが患っていた病理(今現代においても患っていると思われるが)について糾弾している。個人的には「第三日本」の章において、東洋と西洋それぞれの評し方が鈴木大拙『東洋的な見方』のそれに通ずるものを感じさせてくれたことが興味深かった。2016/02/01
ももこ
1
半世紀以上前に日本に亡命し、3年間滞在したドイツ人建築家の文化論。当時の日本の状況が分かり面白かった。この時代よりは日本文化、芸術に対する扱いが真っ当になった日本だが、本書が語る面も多々残っている。建築家の芸術が「技術上の芸術であり、永続性を残す。その作品が傑作となるか否かは懐具合」という一文になるほどと思うと同時にやっと最近建築家も脚光を浴びるようになった現在を思う。2022/10/04