内容説明
本書は、1958年に京都大学生物誌研究会と日本民族協会の後援のもとに行なわれた探険の記録である。ヒマラヤで最も山奥のドーラギリ峰北方高原に今も残る奇習“鳥葬”や、とりわけ未開といわれたこの地域のチベット人の日常生活及び個性豊かな探険隊員の内幕、また異民族の中の人間関係の調整などが克明に綴られている。秘境ヒマラヤへの旅を結晶化させた人間味溢れる不滅のフィールド踏査の書。
目次
1 トルボへの夢
2 探険隊ついに動き出す
3 ツァルカ村についた!
4 ヒマラヤ果つるところ
5 鳥葬の民
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
154
むかし、中学生のときに先生が副読本として推薦していたので興味を持って読んでいました。その後、川喜田先生のKJ法というものを社会人になり勉強したときにこのフィールドワークの手法を応用しているのだとわかりました。最近本棚を整理したときにぼろぼろになったこの本を見つけて再読しました。これだけの記録を自分でつけることなど今できる人はあまりいないのではないかと思うくらいにきちんと記録しています。2016/03/07
ビブリッサ
50
「チベット二郎」の二つ名を持つ川喜田二郎先生の紀行文。1958年!凡そ60年前にチベットの奥地のトルボ地方に8人の研究者らが春から秋にかけて滞在した。ダウラギリとアンナプルナの巨峰が常に眼前に聳える地だ。剣呑なタイトルの本だが、読み進めるとチベットに住む人々の暮らしの大らかさ(大雑把さ)独自の信条や弁え等を、一緒に暮らすことにより見出していったことが分かる。鳥葬や水葬も彼らにとっては至極当然の埋葬法である。私達と違うのは、ヒトは特別ではないという考えなのではないか。死も生も鳥も人も、同じ懐の中にある。2016/04/20
すぎえ
11
今から50年程昔においては地球上にはほんとうに未知の場所がたくさんあったのだとつくづく思う。もちろん、2次的な情報として知っているからといってそれがほんとうかどうかわからない。本書はチベットの鳥葬を学術的に調査した最初の記録を探検記とともに表している。探検記や旅行記を読んでいると先入観や出来上がったイメージが邪魔することが多い。しかし本書は実際に手で触れた体験を物語っている。また、写真が非常にセンセーショナルだった。そしてどうでもいいことで驚いたのだが、川喜田二郎氏の若い姿はオダギリジョーそっくりだ!!2009/06/28
Yui.M
10
チベットの人々の暮らしが身近に感じられる。鳥は人間と共存する神の使い。そんなふうにも思った。2017/10/29
ホムラ
4
ヒマラヤ奥地の民族調査、探検行。最早古典といってもよいものかもしれません。調査結果だけでなく、共同で作業をする際の行動指針のようなものにもなっているのが面白かったです。 現地の人が持っている文化を上から目線や調査者側の価値観ではなく、尊重するスタンスで調査しようという志は随所に感じられましたが、今日の視点から読めばそれでも著者自身にも偏見はあるのでは、と判断せざるを得ない箇所もあります。 それでも、私たちの生活とは全く違う価値観や風習に驚き感動させられました2014/04/03