内容説明
ニイチェが「神が死んだ」と予言した現代は、従来の価値体系が崩壊し、思想史の上でもルネサンスの時代に比すべき大きな転換期をむかえている。そのなかでフッサール、メルロ・ポンティ、レヴィ・ストロースら現代の哲学者たちが、心理学や言語学、人類学などの人間諸科学と交流しながら追求する哲学の新しい方向とは何か。そして彼らが負った共通の課題とは…。人間の存在を問う現代哲学の書。
目次
序 理性の崩壊
1 20世紀初頭の知的状況
2 人間存在の基礎構造
3 身体の問題
4 言語と社会
5 今日の知的状況
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
33
《購入本》先日、亡くなられた木田先生の処女作。初刊は1969年。今から45年も前の著作である。主に20世紀初頭以降の哲学の抱える課題を比較的解りやすく読み手に指し示してくれている。先生は現象学を中心に研究されていたこともあり、その立ち位置から現代哲学を見通した上で、思想、哲学、科学など学術全般への言及を試みようとしている。思想と思考が著しく変転・転換しようとした20世紀以降の現代において(→)2014/10/12
阿呆った(旧・ことうら)
22
[再読]20世紀の現代思想を無理やり簡潔にまとめると『相互に主観的な世界を有する人間の在り方と、他者の差異の考察』だと思います。(以下要約)★デカルト以降非ユークリッド幾何学による『数学の危機』や量子力学によるニュートン再考からの近代合理主義批判★フッサール現象学からハイデガー、メルロ=ポンティ他社会主義批判★後期ハイデガーやフーコーの構造主義とサルトルの実存主義、ラカンまで☆デリダ以降は不掲載。著者の研究対象のメルロ=ポンティ寄りです。何十年も前の著作物ですが、現代思想に興味がある人におすすめ。2015/09/09
ゲオルギオ・ハーン
19
もともと1969年に発行された本のため、現代といっても構造主義までの扱いとなる。あとがきにもある通り現代哲学の概観というものではなく、著者の問題意識が絡んでいるため論点の偏りはある。しかし、それを差し引いても十分なくらい分かりやすく、読みやすい。20世紀初頭の「科学の危機」というこれまで直観的に考えられていたことが測定技術の発達と新しい理論の登場で覆されていった。つまり、直観的に捉えていたことが実はそこまで正しくなかった。その影響を受けて直観的な学問である哲学も再検討が必要になった。2021/10/15
風に吹かれて
17
もともとは、1969年、「NHK市民大学叢書」の一冊として出されたもの。著者の初めての本だそうである。現実存在の観点から哲学し人間が在ることの在りようを見つめる現代哲学。「世界内存在」として主観も客体も含めた現実存在としての<生>の全体(ゲシタルト)を身体性に軸を置いて解き明かそうとする思索する人々の姿にも印象を受ける。個と世界を繋ぐ「シグナル」ではなく「シンボル」や、「ことば」の意味することが、少しだけだけど、見えてきたような気がする。哲学の旅は、始まったばかり。2019/07/01
蛸
12
原本の初版が1969年ということもあり、20世紀初頭の「諸学の危機」から構造主義の登場までの流れを浚う通史となっている。そのため、自然と、現象学に関する記述が全体の大きな割合を占めている(特にメルロ=ポンティについて詳しい)。現象学が現れるまでの歴史的展開の説明も巧み。絶対と思われていた、数学・物理学体系の崩壊は、それらをモデルとした人文諸科学の基盤をも崩し始める。その時、近代の理性主義の両側面である唯物論/観念論を乗り越える必要性が生じ、その方法こそが(ゲシュタルト心理学とそれに伴う)現象学だったのだ。2021/12/18
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