内容説明
「ウパニシャド」とは、紀元前7世紀に遡る古代インドで著された哲学書の総称。その内容は、宇宙の根本元理・輪廻転生・解脱・カルマ(業)等々多岐にわたり、輝やかしいインド精神文化の源泉として不滅の価値をもつ。膨大かつ難解な原典の中から碩学辻直四郎博士が、理解のための核心となる精髄を摘出して平明に解説した。インドを知り、哲学を学ぶ上で欠かすことのできない比類のない名著である。
目次
第1章 総論(ウパニシャッドの語義;ヴェーダ文献中における位置;哲学思想の沿革;ウパニシャッドの分類;本書の記述範囲)
第2章 本論(ウパニシャッドの主題;一元的原理の探求;梵我一如;梵・我の本質;根本原理と現象界との関係;睡眠の考察;輪廻と業;解脱;倫理観)
第3章 余論(哲学的価値;文化史的価値;文学的価値)
付録(翻訳)(ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド第4篇;チャードーギヤ・ウパニシャッド第6篇;チャーンドーギヤ・ウパニシャッド第5篇;カウシータキ・ウパニシャッド第1章)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
24
仏教以前のインド哲学の解説書である本書『ウパニシャッド』はなんと初版は1942年でラジオ講座の原稿をまとめたもの。学術文庫版では現代かなづかい、新漢字にしてあるが読むのに大変苦労した。輪廻転生、カルマ、解脱などバラモン教の教えをブッダがどのように仏教に取り入れていったかを知るうえで大いに参考になった。戦時中に書かれた本書が今でもウパニシャッドの参考文献として必ず登場する文献であり続けることに驚きを感じる。2022/01/31
デビっちん
18
久々に読んでもチンプンカンプンという本でした。そんな中でも感じとれたのは、インドの哲学人が真理探求しているということ。こういう本が本棚にたくさん並んでいる人がいたら弟子入りしたいです。2020/08/25
bapaksejahtera
14
サンスクリットを極め世界の学問水準を高めた学者が戦争中に纏めた著作。文庫200ページの中に容易には体系化し難い印度哲学を要領よく説明する。文章は解り易く美しい文語文であるのに、今日の弊風に依り、現代仮名遣いに直され正字を用いぬのが興ざめではある。全体は語義歴史等からなる総論、内容を概述する本論、その補遺ともいうべき余論及び原典の例示訳である付録からなる。仏教開教と並行して生じた宗教哲学運動は、祭式主義に堕したバラモンの宗教を革新する意図から両者等しく輪廻からの解脱を目指した。その差異及び類似共に印度らしい2022/06/23
おMP夫人
9
なにせ相手は気の遠くなるほど昔から星の数ほどの人々が考え、対話を繰り返してきた思考の集まりです。たった200ページやそこらで理解しきれる代物ではありません。ただし、その輪郭に触れることができる1冊でした。ウパニシャッドの複雑なその姿と抽象的な概念は、思想というよりは人間そのものにも思え、眩暈がするほどの壮大さには圧倒されます。ですが仏教やその他、日本人に身近な存在へ影響を与えているだけに、言葉にはできなくてもなんとなく肌で感じ取れるような気がして、異様なまでの知的興奮も生まれました。梵は我なり。2012/09/13
荒野の狼
7
本書は、昭和17年に出版されたものであるため、文章の格調は高いのですが、文語と旧字体の漢字が注釈なしに書かれていますので、内容の完全な理解には国語辞典その他を座右にする必要。内容はまずヴェーダやウパニシャッドの文献的考察からはじまり、本論として梵我一如などのウパニシャッドの主題が書かれています。ウパニシャッドの入門書としては難解で不適。後半80ページほどには著者の訳になるウパニシャッドの抜粋がありますが、完全に文語であり、一切注はなく、内容の理解は困難で、日本語訳でありながら、この部分の現代語訳が欲しい2011/10/11