内容説明
本書は、戦前戦後を通じて長い間、知的青年の必読書として不動の位置を占めていた。この爆発的に読まれ続けた理由は、何が人生にとって大切であるかを、改めて自覚させる拠点を与えてくれたこと。また、本書が哲学への巧みな人門書であると同時に、デカルトやカントと並んで西田幾多郎の『自覚に於ける直観と反省』を取りあげて、現存する日本人の思索力を高く表価し、学問的な希望を与えてくれたからである。
目次
真理思慕(真理への愛欲と知欲=知識欲;新生としての哲学的精神;哲学への要求と非難)
立場と世界(学問とは何か;そのままの事実すなわち純粋経験とこれを見る立場;種々の立場、立場における真理及び立場以前;立場とその立場における世界;立場の立場=哲学の立場;常識と哲学、さらに立場の考察;科学と、科学批判としての哲学;科学の方法と哲学の方法;芸術的の態度;宗教的の態度;真理について;科学的の立場における実在と真理;芸術及び宗教と絶対界;結論=道徳と哲学)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
46
懐かしい本にこの読書メーターで。単行本が出て間もない頃に。書庫に残ってるかな。いま読み返したらどう感じるか。
左手爆弾
3
アリストテレスなど古典ギリシア哲学に業績のある筆者だが、本書は哲学の入門書として色々な思想に触れる。一応の核にすえてるのが「純粋経験」なので、手堅い古典研究っぽい入門がお望みの人には期待はずれかも。個人的な感想としては、哲学の入門書としては、同じ事を繰り返していて結構退屈な部類に入る。だが、「哲学と大衆」「文学と大衆」というテーマについては、わずかな記述ながら筆者の鋭い問題意識を感じさせる。結局、筆者は後に大衆に負けを宣告されるのだが、この著作を書いた時の精神を何か別な仕方で発揮できなかったのだろうか。2014/09/07
死の舞踏
0
哲学とは何か、が本書の主題。哲学とは考える立場の考察。科学に対して批判を続け科学者の立場は何処まで有効なのかを哲学者は考えると言う。科学は時間、空間、観測者と対象の分離など前提を置くから、科学が全て正しいと思うべきでは無い云々、と始終科学に対して批判をしている。しかし科学は前提自身も問うて来た学問である。前の時代の前提であった時間、空間は今では説明されるべき物理的対象である。主客分離もそうである。科学者にとって科学批判は嬉しいものだが、有用な批判は得られなかったな。よく言われてることが書いてあるだけ。2013/02/02
concreteseijin
0
面白かった。2011/09/17
よしくん
0
人間のあらゆる思考は、言語化不能な純粋経験に何かしらの仮定をかける事が前提となる。哲学はこの仮定を批判、吟味してゆく働きだ!と、前提して話が進んでゆく。科学批判が気持ちが良くて、書かれた時代からすれば当たり前なんだが、環境問題やらその弊害を安易に論じるのでは無く、科学とはどういうものか?という事に正面からぶつかっていく。途中若干冗長気味の所もあるのだけれど、最後もアツい。途中まで読むと、何故人は真善美を求める傾向があるんだろう?と疑問が出るのだが、これにしっかり応えてくれる。読んで心地よい名著だと思う。2023/01/01