内容説明
本書は、東北の恐山や伊豆利島、吉野・熊野の祭りと信仰など、日本の農山漁村の民衆の間に培われた伝承文化を追究した民俗採訪記である。著者の学問的な関心が当初の地理学から歴史学、そして民俗学へと移行した、その転機をなしたのが柳田国男との出会いであった。以来民俗調査へと深く沈潜し、やがて桜井民俗学の結実を見るに至る。宗教と歴史と民族を包括した複眼思考のもとに民衆の基層文化の構築を目ざす桜井民俗学への招待。
目次
第1部 日本の精神的風土(東北の民間信仰;祭りと信仰;孤島の哀愁―八丈小島;黒潮洗う離島―伊豆御蔵島;伊豆利島の奥霊様;吉野・熊野の信仰;淡路島新風土記;鬼ヶ島の祭礼と若者たち―讃州 女木島祭礼聞書;宇和の俗信)
第2部 歴史探究と民俗学(卑弥呼と民俗学;日本人の祖先観;死の儀礼―埋葬・墓制・供養など;生と儀礼―王朝時代の通過儀礼;抜け参りと民間信仰―民間における伊勢信仰の原初形態;門前町の移り変わり―宗教都市成立の歴史民俗学的考察;正月行事ノート;近世東国の民衆生活―『おくのほそ道』と『東遊雑記』;明治100年と靖国神社―日本における御霊信仰の系譜)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
筑紫の國造
6
我々日本人は古来、どのような信仰を持ってきたのか。本書は、日本人の「信仰」を様々な面から探り、その精神風土を明らかにする。一見厳しい体裁だが、論文ではなくエッセイ的な物なのでとても読みやすい。個人的には、第一部で離島の風習を扱った「伊豆利島の奥霊様」「宇和の俗信」などがとても面白く、本土とは異なる独自の信仰を持つ離島への興味が改めて湧いてきた。反対に、全国的な伊勢講などにはあまり興味を引かれなかった。それにしても、昭和40年代ですらすでに失われていた各地の信仰は、今どれほど残っているのだろうか。2016/11/20
mittsko
5
大学院生だった頃以来かな、桜井先生のご著書を久しぶりに読んだ。厳密な学術書ではなく、歴史民俗学的「随想集」。日本の民俗文化の固有性として、御霊信仰を位置づける立論の力づよさが、とても印象的だった。今や通説となっているがゆえにこそ、ちゃんと考えてみたい論点だ。なお、硬質な文体をなつかしみつつ読んだが、そこに著者の人となりを読み込む、山折哲雄「解説」がすごいな、と思ったです…(=゚ω゚)ノ ※ 1987年刊の文庫版。底本は、『死霊の誘い』(1967年)を増補のうえ改題した同題書(1970年)2023/02/10
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