出版社内容情報
【内容紹介】
平安朝期、藤原氏栄華の世界の男の生きざまを、男の手によって内部告発的に描き出した異色の歴史文学作品。叙述は紀伝体であるがそれが却って登場人物の性格を特徴的に捉え、あざやかな人物像を照し出し、四人の話者の語り口と相まって、歴史の見方のとかく片寄りがちな弊を巧みに避け得て、謀略的事件の真相を伝えている。歴史の鏡に写る当代一七六年間の登場者にあびせる真実と讃美と批判のはざまに、和泉式部紫式部も顔を出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
武井 康則
11
「大鏡」の全訳。本文はなく、訳と註、解説、天皇、藤原氏家系図。これほどの大部とは知らなかった。藤原道長礼賛の書。そのため、道長前の200年ほどの歴史を振り返る。まずは天皇、そして大臣(すべて藤原氏)そのため語り部を200歳近くの老爺二人の思い出話としている。6巻からなり、1巻で帝紀と大臣序説。2巻で藤原冬嗣からの名だたる藤原氏で、5巻と6巻で道長を取り上げている。紹介は血筋と簡単なエピソード。人物編で関わった有名な事件など。教科書その他で懐かしい知った名なので読めるが、そうでなければひたすら退屈だろう。2024/08/20
かもめ通信
6
文徳天皇即位から後一条天皇の治世に至るまで14代176年間の宮廷史を、藤原北家、とりわけ藤原道長の栄華を軸にして語りあげる。和泉式部や藤原道綱母、清少納言や紫式部らが活躍した時代、彼女たちが書き残したあれこれを裏付けると共に、現代作家たちが平安の時代小説を描くに当たっても参考にしているというだけあって、あのエピソード、このエピソードと、ここのところ読みふけっていた物語の場面が次々と登場する。ああ、あの話は本当にあったこと、あるいは当時からあったとされていたことだったのだなあ~などと思うと感慨深い。 2014/05/09
おMP夫人
6
その持ち上げられ具合から当時、藤原氏(特に道長)が誇っていた栄華を窺える賛美ぶりです。そのような内容でありながら一族に都合の悪い事実にも目を背けず、藤原北家に肩入れしつつもそれなりの公平さを持つ姿勢と、時に痛烈な批判を織り込むのを忘れないバランス感覚が特徴でしょう。身内による政治争いなど陰湿な話もありますが、老人の昔語りというスタイルがほのぼのムードを引き出し、独特の魅力を演出しています。歴代天皇や数多の大臣を前座に据えた、藤原道長物語といった印象でしょうか。次はアンチ道長の本が読みたくなりました。2012/10/16
午睡
5
藤原時代、ありがたいお坊さんの法話を聞きに集まった人々の中に百歳を超える翁が二人いて、人々の視線は世継と名乗る翁と良樹と自称する翁に注がれる。その二人が驚異的な記憶力で語る文徳天皇以来、清和、陽成、光孝、宇田、醍醐、朱雀、村上、冷泉、円融、花山、三条、後一条の治世の物語は、いつしか藤原摂関時代を讃える物語につながっていくという趣向。世継と良樹という、わかりやすい名の血統の称揚である。 ヘーゲルはどこかで「国王の最大の国事行為は性行為である」と書いているが、それがまさに古代政治の核心であることを実感する。2020/09/07
頼ちゃん
4
大河のために久しぶりの読み直し。2024/04/18