出版社内容情報
【内容紹介】
密教哲学の魅力を、著者は次のように説く。「『世界というものはすばらしい。それは無限の宝を宿している。人はまだよくこの無限の宝を見つけることが出来ない。無限の宝というものは、何よりも、お前自身の中にある。汝自身の中にある、世界の無限の宝を開拓せよ』。そういう世界肯定の思想が密教の思想にあると私は思う。私が真言密教に強く魅かれ、現在も魅かれているのは、そういう思想である」と。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
48
哲学者が哲学的に書いた物だけに良く分からなかったというのが正直な感想。私にはまだ早かったのかとも思う。二度三度読んで、ようやく少し理解ができるのかも。そもそも奈良時代の人物が考えたことなんてどうして現世の人間が語れるのか。空海の著書を読み込んで、関連書籍を漁って、時代考証して、論理を組み立てて、空海の心情を復元したのかなぁ。難しい本だった。2019/09/20
kazuさん
38
仏教は本来、現世にたいする否定精神を、その根幹に持っているが、空海が導入した密教は現世に対する否定精神を否定する。そして、世界というものは素晴らしい。それは無限の宝を宿している。それは、汝自身の中にある。世界の無限の宝を開拓せよと、と教える。これが密教の思想的特徴であると。真言密教では、凡夫であっても、大日如来と一体化することによって教理に達することができ、仏になれる。即身成仏である。大日如来は仏陀より中枢側に、宇宙の中心に配置されており、空海の編みだした真言密教は、革新的な宗教だと改めて思った。2024/01/10
KAKAPO
34
「密教は、毘盧遮那→金剛薩埵→龍猛→龍智→金剛智→不空→恵果→空海と伝わった。龍猛は龍樹ともいい、大乗仏教の建設者とされる人であった。密教経典は、もっとも新たにつくられた偽典ということになる。金剛智が南インドから連れてきたのが不空であり、金剛智の死後、インドに戻り、龍智に会って密教を学んだ。」このように、空海は奇跡のような灌頂の連鎖を受け、帰国した空海は、由緒正しい密教を習得したと、大胆な解釈によって更に進化させた。2018/10/29
fishdeleuze
12
わずか100ページほどの小著ながら、空海の人物、密教哲学、主要著作と幅広く網羅され、そのアプローチは深い。後半、主要三著作の解説は難解で、一読して理解するのは難しいけれども(深甚微妙とはよく言ったもの)、それでも、本書の白眉である密教とは肯定の思想(哲学)であるという主張は読んでいて元気がでる。「世界というものはすばらしい。それは無限の宝を宿している。無限の宝はお前自身の中にある。汝自身の中にある、世界の無限の宝を開拓せよ」2012/12/11
くれは
9
大変面白く読めたが、疑問に残るところもあった。この本の内容が本当にそのまま空海の思想を適切に解きほぐしているのかについては、すこし慎重に構えたほうが良いかなと思う。というのも、浅学の自分が知りえている範囲に限定しても、プロティノス、ライプニッツ、スピノザ、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガー、ソシュール、ウィトゲンシュタインなどが唱えた考え方と酷似した解釈が本書には非常に多いから。梅原氏はもともと西洋哲学が専門であったらしく、彼らの思想を空海の著作に「投影して」解釈してしまっている可能性がある。2024/06/29
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