出版社内容情報
【内容紹介】
鴨長明が隠棲した、京都市日野山の、方丈の庵の跡に立つ時、人は、そこの生活が、いかに苛酷なものであったかを思わぬ者はないであろう。彼は、日野山における孤独と寂寥と窮乏に堪え、自己の生涯の帰結をこの庵の生活に求めて、その中に、深い「閑居の気味」を見いだしている。『方丈記』は、この閑居生活の真実な表現であって、いつの世の読者にも、現実社会の煩累を越えて、自己を深く生かす道を示唆してやまないものがある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
46
注釈が詳細で、詳しすぎて読みづらいほどである。概説を読むだけでも必要な情報がだいたい入手でき、よかった。2016/03/06
おせきはん
22
災害に対して無力な人と栖(すみか)の無常を目の当たりにし、俗世を離れて心の安らぎを追求した鴨長明の書いた随筆です。隠遁生活を通じて心の安らぎを獲得したように見えたものの、最後には、方丈での生活に愛着を抱く自身を顧みて、まだまだと自らを突き放します。自らを客観視しようと格闘しながらも、時折、普通の人間の姿を見せる鴨長明に親しみを感じました。2020/05/03
カブトムシ
22
「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。…」の有名な書き出しで始まる第一章では、無常の世における人と栖(すみか)のはかなさが提示される。第二章から第六章では、著者の鴨長明が経験したいわゆる五大災厄が語られ、第一章が具現的に記述されている。大火、辻風、遷都、飢饉、地震である。その記述には、時代を超えて心打たれるものがある。第七章以降では、鴨長明が、自分の身の上を語っている。方丈の庵で生活して、心の平安を得ようとしているが、なかなか悟りを開けない姿が伺える。
大先生
12
注釈と解説が充実。鴨長明が出家・遁世したのは①もともと心に抱いていた無常観、②河合社禰宜事件、③強情で柔軟性のない性格が理由だとされています。長明の辿り着いた結論は「三界は、ただ、心一つなり」。中村天風先生も同じ結論ですね。そして、方丈庵で自足している身からすれば都で俗世間の煩わしさに囚われている人の方が気の毒だと。魚は水に飽きないし、鳥は林に住むことを願う。その気持ちは魚や鳥でなければ分からない。「閑居の気味も、また同じ。住まずして、誰か悟らん」ちょっと強がってませんか?(笑)2025/04/23
denden
4
「行く川の流れは絶えずして・・・」と言う有名な分で始まる冒頭以外殆ど読んだことがなかった作品で作者の人物像もさして知りもしなかった。恐らく国文研究者か、よほど惹かれる理由がある人でなければ同じようなものではないかと思われるが、有名なことには違いない。実は先行して原文のみの「岩波文庫版」を読んでいたのだが判然としない部分もあり同時に購入していた「全訳注」の学術文庫版を読むことにした。岩波もさして難しい古語が出てくるわけではない。平安末期になると古文もい中々読みやすくなってくる。2024/05/05