内容説明
一の谷で討たれた平家の首が都に入り、大路を渡され、捕虜となった重衡も六条通りを引き回された。朝廷では平家が安徳帝とともに持ち去った三種神器の返還をもとめ、重衡との交換を条件に折衝したが、平家はこれを峻拒した。維盛は、屋島の平家の陣を脱して高野に入り、出家をしたのち熊野に詣で、やがて那智の沖で入水をとげた。捕虜となった重衡は、頼朝の要請で鎌倉に下り、頼朝と面謁する。九月、範頼は平家追討に発向した。
感想・レビュー
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NAO
54
捕虜になった重衡の処遇、維盛の出家・入水。捕虜になったとはいえ、あくまでも侍としての矜持を持ち、見苦しいさまも見せず自分の運命を受け入れている重盛の態度は、その潔さが、一層哀れを誘う。戦場から一人逃げ出し高野山で出家し入水自殺した維盛を人間的だとか哀れでならないとか言う向きもあるが、平家の当主として侍としての立場から逃げ、夫としての立場からも逃げ、自分の来世のために出家して自殺する維盛は、ただただ自分勝手なだけだとしか思えない。2017/09/23
ターさん
1
平家は敗走してゆく。都に護送された重衡は、死を避けられない運命の中ついに斬られる。維盛は都に残した妻子のことが忘れがたく屋島を抜け出す。ついには那智の海に入水。哀愁感ある叙述が続く。重衡には法然、維盛には滝口入道。『平家物語』における仏教思想の存在が見える。戦場となった藤戸は地元である。苛酷で非情な佐々木三郎盛綱は、道案内をしてくれた「浦の男」の「頸かきき(ッ)てすてて(ッ)けり」能の『藤戸』では、殺された男の母の老狂女が、我が子を返せと盛綱に迫り、男の怨霊も登場する。結末は別として、戦争は非情なものだ。2025/03/12
O. M.
1
この巻では、一の谷で捕虜になった平重衡のエピソードが大きな部分を占めます。捕虜の身で感じる不安、人間臭い感情の吐露が哀れさを誘います。さらに、法然と対面する「戒文」の段は印象的でした。2017/05/29
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