内容説明
破竹の勢いで進撃してきた木曽義仲は、寿永2年7月28日、比叡山に難を避けた後白河院を守護して入京し、平治の乱以来20余年見られなかった源氏の白旗が、都にひるがえった。一方、都を落ちた平家は九州にのがれたが、在地豪族緒方三郎維義に追われて、九州も脱出しなければならなかった。都の義仲勢は不法狼藉の振舞いが多く、後白河院を中心とする貴族との対立をふかめ、ついに義仲は院の御所法住寺殿を攻撃したのであった。
感想・レビュー
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NAO
58
一番乗りで都に入った義仲の田舎臭さを散々に愚弄する都人たち。戦に強く鎧兜だとりりしい義仲が衣冠束帯になったとたんに力を無くしてしまうのがなんとも哀しい。牛車の乗り方もわからず嘲笑される挿話は、『今昔物語』28巻の源頼光の四天王が牛車で葵祭を見学に行って失態を演じた話を思い出させるものだった。九州を追い立てられ屋島に拠を置いた平家の戦の中では、逃げ遅れた息子のもとに戻ってともに討たれた瀬尾太郎兼康の話が哀感漂う心に残るものだった。2017/09/16
O. M.
2
前巻で活躍した木曽義仲、都落ちした平家、東国で着実に力をつける源頼朝、3者の動向・勢力争いが語られます。「ザ・戦乱」といった感じです。こうなると文化だ、作法だ、と言ってはいられず、暴力を持っている武士のものですね。2017/01/01
ターさん
1
巻第八の主役は、郷土の名バイプレーヤー瀬尾太郎兼康である。前巻の倶利伽羅谷で、義仲軍の倉光次郎成澄の捕虜になる。斬られる運命だったが、義仲は「あ(ッ)たら男をうしなうべきか」と、命を助けた。しかし、義仲の部下を殺害して脱走する。捕虜にされた成澄まで討ち取る。兼康は主従三騎になり落ちて行くが、逃げ遅れた嫡子宗康を見捨てることができず、ついに今井の四郎に討たれてしまう。義仲曰く「あっぱれ、剛の者よ。これこそ一人当千の兵というべきだ。惜しいことに、この者どもを助けられなかった」これをロマンと言わず何と言おう。2025/02/16