出版社内容情報
【内容紹介】
この道や 行く人なしに 秋の暮
松尾芭蕉はひたすらに俳諧の道を追求した人だった。芭蕉の芸術の完成までにはいくつかの曲折があった。はなやかな機知で世間の人気を集めた時期もあり、世俗への反抗心から固苦しい作品を作った時期もある。本書は芭蕉の人生行路をひとつひとつの句を追って描いている。芭蕉の俳句への入門書であると同時に、ひとりの男の生き方をも描く、芭蕉研究の第一人者による書きおろし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
14
嵐山光三郎さんの芭蕉本とは違い、基本的に通説に沿いながら、芭蕉の生まれからその死までを、折々の俳諧を解説しながら辿った評伝。衆道や隠密活動のことには全く触れられていないし、其角や曽良など弟子たちのこともあまり深くは突っ込まれていない。俳諧の読み解きもごく素直で、「古池や」の句についても嵐山さんのように実証実験をして「蛙は音をたてて池に飛び込んだりはしない」ということを突き止めたりはしていない。ひとまず「俳聖」としての芭蕉の通説を知りたい向きにはよいかと思う。これはこれでためになったし、読んで良かった。2024/10/24
よし
5
芭蕉の一生をわかりやすく紹介。芭蕉入門の書。俳句一筋に生きてきた、真摯な態度に心打たれた。江戸に出てきた頃、「あら何ともなや きのふは過ぎて ふくと汁」 から、初めの隠遁の頃「雪の朝 独り干鮭を 噛み得たり」、初めての旅では、「野ざらしを 心に風のしむ身かな」そして、「古池や・・」。ここに至って、「不易の理を失わずして、流行の変にわたる」俳論。そして「風雅の道」の確立。さらに、「この道や 行く人なしに 秋の暮れ」 最後の「旅に病んで 夢は枯れ野を かけ廻る。」まで。道を究めつくそうとする凄さに感服した。2017/07/30
まっちけん
4
驚くほどあっさり読めた。元々NHKラジオで話した内容の書き起こしということもあるのだろう。すっと入ってくるっていうのは、浅い知識を浅く話してるからじゃなくて、ものすごく深い知識を易しい言葉で話しているから。それってすごい難しいこと。40年くらい前の文庫本で(でも刷りは10年くらい前のだけど)、行間や字間がガチャガチャだったのが気になった。どうしてこうなった??2019/09/25
うた
4
芭蕉の生涯と作風の変遷を順々にたどることができる良い入門書。『野ざらし紀行』を読んだときに感じた硬さが、脱俗直後の気負い故であることが理解できた。うむ、予備知識なしの自分の読みもあながち的外れでもなかったわけだ(笑)。2013/04/21
るい
3
芭蕉の一生を知る入門書としてぴったりの一冊。いつ、どこで、何を思い、どのような句を詠んだのか。旅の行程と、折々で詠まれた俳句に触れながら、芭蕉の一生を理解することができた。芭蕉にも試行錯誤していた時期があり、「古池や」で蕉風を確立してもなお、旅に出て、次なる「かるみ」の境地へ達するところを知り、本当に人生を賭けて俳諧を極めようとしていたのだと知る。その最後の創作「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」は、芭蕉の一生そのものをみごとに描ききっている。ますます芭蕉の魅力を知った。2018/08/27
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