内容説明
無責任システムを放置したあげく、突如わき起こった「自己責任論」の大合唱。結局、誰が「責任」をとるのか!?―「公」と「私」、「責任」の東西比較、戦後体制の本質。この国の病根を深く洞察した警世の書。
目次
1 「恋愛」の自己責任とは?
2 「責任」とは何だろうか
3 「公」と「私」について
4 「無責任の体系」は日本的現象なのか
5 日本は特殊な国なのか
6 戦後体制はどのように生まれたのか
7 住専問題から日本の明日を考える
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tolucky1962
8
多くのレビューにありますが、タイトルと内容にズレ。はやり言葉を使って売ろうとしたかな。話もあちこち飛んでますが、公と私の概念について日本が独特だというのは面白い視点。ここから戦後以来の日本の政治・官僚の批判に広がっている。階層的に公が上で私が下、役人は私を捨て公にすがり、庶民を私として、はけ口にするという構図。階層の中で個人の責任をうやむやする。また、雇用体系や家族(私)に社会(公)が入り込み分断される姿も描かれている。自己責任について直接教えてくれる本ではないが、広く調べている学者の話から考え直そう。2015/02/05
kozy758
7
一貫性がない記述もあるが、アメリカが「公」という戦後の自由民主党の認識の一貫性は言いえてると感じた。安倍首相では特にそうである。これだけでも読んだ価値があった。「住専」問題など具体的な記述もまたいい。2017/04/20
うえ
5
「全体のために「私」が抑圧される事態は、19世紀以降の近現代ヨーロッパの歴史でも珍しいことではありませんし…「公」と「私」の対立関係も、現実の上では危ういものだった…残念ながら、人間の歴史のなかで、「公的領域」に比べて、「私的領域」を確固としたものとして徹底的に擁護してきた国家は存在しなかった、と言ったほうがいいでしょうか。言い過ぎだと思われるでしょうか。ヨーロッパの社会について理想化するのは、ある年代以上のわが国の知識人の特質でしょう…安易に比較して、遅れているとか進んでいる、と論ずるのは無意味なこと」2018/10/07
白義
5
社会学者の書いた日本論として充実していて面白いけどタイトルはちょっと悪いなあ。取り扱う話題は多岐にわたるし、自己責任というより無責任に関する本だ。責任の検証を曖昧にする言葉として自己責任がある。と、なると当然丸山真男の無責任の体系論が来るが、桜井哲夫は無責任の構造は特殊日本的なものではないといい、ドイツの日本への影響や戦時動員体制も参照する。最終的には、日本にいかに公共、近代を打ち立てるかの話しになる。ものすごくいい本だけどタイトルだけ見るとダメに見えるかも2011/04/15
Hiroki Nishizumi
4
考えさせられる。自由恋愛という幻想、終身結婚制、性器性愛の婚姻観。また無責任の体系など自身の意識を深く沈めて反芻して考察したい。2016/08/23