内容説明
身体の傷は治っても心の傷は消えない。人格を、ときには人生さえ支配してしまうトラウマとは何か。第一線での臨床活動をふまえて「子どもの虐待」の問題をとらえなおし、傷ついた子と親の心の回復を説く。
目次
第1章 子どもの虐待を考える
第2章 トラウマとしての虐待
第3章 虐待のトラウマと子ども
第4章 子どもを傷つけてしまう親たち―虐待を生じるトラウマ
第5章 トラウマが癒えるということ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マッキー
15
トラウマからの回復・トラウマの克服、その構造についてがメインで述べられている。過去に酷い体験をした記憶が「凍結」され、何かをきっかけに「解凍」されてフラッシュバックするという記述が一番興味深かった。一見普通に見えるような人でも何かのトラウマを抱えている場合があるし、その経験は今後の当人の生き方にも影響を与えることがあるはずなので、今以上に適切なケアと迅速な対応が求められるのではないか。そしてそのケアをする人材の育成も同様に求められるであろう。2017/06/11
ゆう。
9
1997年初版。子どもの虐待と、虐待を受けることで生じるトラウマについて学ぶことのできる本です。虐待を受けた子どもの傷は、深く深く心に残ります。それをどうしたら癒すことができるのかを、トラウマという概念を用いて考えているのが本著になります。虐待は絶対に許すことのできない暴力です。そのことによって子どもたちは自らを解離させ、トラウマとして残ることによってその後の人生をも苦しまなくてはなりません。同時に、著者が書いていましたが、虐待をする親に対しては非難や罰では解決できず援助が必要だと述べられていました。2014/06/27
okaching
3
トラウマについてわかりやすく書かれてある。トラウマとは心の傷であり、それによって心理、精神に何らかの障害をのこすもの。トラウマからの回復はわかってはいるが、時間がかかる。何度も同じ事を繰り返す子どもにイラッとしてしまう事も。2015/07/30
こばまゆ
3
同じ著者の「子どもの虐待」が良書だったので続けて読む。トラウマのシステムが解説されており、回復の3つのRについても書かれている。 1997年に書かれたもので、もう15年以上前の古い本になっていて、この時点では、養護施設などで、回復にあたるプログラムが、まだ実施されていないとのこと。現在は、どうなっているだろうか?回復へのプログラムが、開発され実施されていることを願う2015/01/02
イカカイガカ
2
1997年に刊行されたものだが、トラウマとはどういったものなのかを考え理解するのに今日においてもとても有効で、基本的な考え方をおさえるのに非常に良い本だった。トラウマを抱える子供(あるいは大人)が、トラウマとなった人間関係を自ら再現してしまうという事を理解しているかどうかだけでも、そういった人達に接する際、対応が大きく違ってくるだろう。その人の心が本当は何を求めているのかを理解する事。難しい事だが、とても重要な事だ。最終章「トラウマが癒えるということ」は特に読み返していきたい。2015/07/19