内容説明
なぜユダヤ人は隔離居住を強いられたのか。フランクフルトのゲットーの建設から解放までを実証的に跡づける。
目次
1 ゲットー前史―ユダヤ人隔離思想の起源と発展
2 ゲットーの成立とその構造
3 ゲットーでの日常生活
4 過密化、そして解放の動き
5 ゲットー後史―解放前後の諸問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本匠
15
フランクフルトのユダヤ人ゲットーがどの様な過程で成立し、どの様に終焉を迎えたのかについて書かれた本。キリストを殺した民族であるという事、事実ではない儀式殺人の噂、他の生業を禁止され、金貸しに成らざるを得ないという職業差別などにユダヤ人達は晒され続ける。差別がより深い差別を生んでしまうというシステム。これは現代の私達も同じ様な状況にある。正しく知るという事はそもそも無理な事だけれど、多くを知る事は必要な事だろうと思う。もっと読まれてもいい本だと思う。2018/01/14
新田新一
12
フランクフルトのユダヤ人ゲットーを通して、ユダヤ人差別の歴史を記述した本です。これを読むと、なぜユダヤ人が金銭を取り扱う仕事に就くようになったか理解できます。嫌らわれるようになった理由も詳細に書かれています。イエス・キリストを殺した民族とみなされ、キリスト教では卑しい仕事と考えられた金融業に従事したとのこと。財力があるので各国の王は彼らを絶えず利用しました。ゲットーでの悲惨な生活を読むと胸が潰れます。ユダヤ人の問題は歴史的に根が深く容易に解決できないことが、本書のおかげで理解できて有難かったです。2023/11/14
Alm1111
6
この手の学術書としてはわかりやすい文章。ユダヤ人がなぜ迫害の対象になったのか、自由都市フランクフルトを経済で支えたユダヤ人が、それでも迫害され続けたのかがわかりやすく書かれている。意外なことに為政者が率先してユダヤ人を迫害したのではない。ユダヤ人は「キリスト教の敵」という共通認識の下、庶民の不安のはけ口のターゲットにおあつらえ向きの存在だったのだろう。二千年に及ぶ彼らの受難はナチスの終焉と共に終わったのか。人々の深層心理に潜む異分子への不信と不安は、世界が揺るがされれば再び現れるのではと思ってしまう。 2024/11/04
おらひらお
3
1996年初版。フランクフルトに建設されたゲットーの通史的内容であるが、ゲットーがユダヤ人の差別を助長しつつも、ユダヤ人やその文化を守ったとの指摘は重要かな。また、ゲットーの開放には、ナポレオンが大きく関わっていたことはおもしろい。2012/02/08
遠山葉月
1
フランクフルトゲットーの成立から終焉までを例にユダヤ人差別の歴史を書く一冊。第二次世界大戦時のホロコーストは歴史の一点として存在するのではなく、長い差別の歴史の線上に連なるものだと認識させられる。 自由都市を謳うフランクフルト市政、市民がどうしようも保守的で差別撤回が遅々として進まない様は、客観的に見れば滑稽なのだけれど、どこか現代日本を見ているよう。その先のドイツの歴史を知るだけに、怖さを感じた。2024/10/16