内容説明
「高貴な理想」とは裏腹に、もぐり酒場の隆盛、密輸・密造業者の暗躍をもたらした禁酒法とは。華やかな「ジャズ・エイジ」を背景に問う。
目次
第1章 禁酒法が生まれるまで
第2章 禁酒法とは何なのか
第3章 取り締まる者・取り締まられる者
第4章 もぐり酒場をめぐる人びと
第5章 「高貴な実験」の終焉
第6章 禁酒法は何をもたらしたのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shikada
33
1920年代のアメリカで実施された「禁酒法」。なぜそんな法律ができ、どんな結果をもたらしたのかを丹念に追う一冊。めちゃくちゃ面白かった。しらふの労働者を求める企業の思惑と、第一次世界大戦による禁欲的な世論が噛み合って禁酒法が成立するも、酒の密造・密輸を巡るいたちごっこやギャングの台頭を経て、大恐慌がとどめとなり禁酒法は廃止された。酒の密輸・密造のくだりはギャグとしか思えない事例がいっぱいあって笑った。一方で、この社会実験がアメリカ人の飲酒量を半減させ、高度に機械化された現代に適応させたという論は興味深い。2020/01/30
yokmin
30
米国憲法の修正条項として禁酒法は1920年に発効した。アルコール類の製造、運搬、販売、輸入などを禁じるが、飲酒は罰せられないなどという抜け穴だらけで、不法なクラブやアルカポネなどのギャングも登場した。結局1933年に廃止され、失敗に終わった。いかにもアメリカらしい話で興味深い。シカゴには当時の雰囲気を残した「ガスライトクラブ」が現在もある。かつては会員制クラブで私も会員であった。2021/06/29
fseigojp
24
カポネ、フィッツジェラルド、フォークナー、ジャズ・エイジ アメリカの不可解さの基底をさぐる名著2016/07/29
秋 眉雄
23
一部の狂信的な権力者たちが強行的に推し進めた法律ではなく、家庭から教会から産業界から、とても生真面目に国の未来を立ち行かせる為に取った行動の末として憲法修正としての禁酒法があるというところにアメリカの若さと力強さを感じました。そして、そこから新たな文化や慣例が生み出されていくという面白さにもアメリカという国自体のダイナミックさがあると思いました。憲法と州法のつばぜり合いなんて、映画にでもなりそうな面白い話です。2018/05/16
崩紫サロメ
20
アメリカ合衆国の禁酒法について、20世紀的な、つまり巨大化する近代資本主義に相応しい社会へ変えるための「高貴な実験」としての側面、それ故の失敗を描く。禁酒法支持者の多くはWASPであり、ドイツ系移民が多くを占める酒造業者と政治家の癒着は許すことのできない腐敗であった。しかし結局のところ禁酒法は一部の国民が酒を飲み続け、飲めなくなった国民が多数いるという不平等を露呈することになり、「高貴な実験」は中止に終わる。禁酒法を巡る憲法と地方自治の問題も興味深かった。2020/10/05