内容説明
東方の夢、胡椒がシナモンが茶が、ロンドン庶民の食卓に到達した。「楽園」の物資を運ぶ東インド会社は、世界をヨーロッパに収斂させる。貿易を牛耳り、インドの支配者となった一大海商企業の盛衰とその時代を読む。
目次
第1章 相つぐ東インド会社の設立
第2章 胡椒・香料の輸入
第3章 キャラコの輸入と重商主義
第4章 巨大株式会社
第5章 会社の組織と輸入商品
第6章 南海会社
第7章 南海景気と恐慌
第8章 茶の輸入と中国貿易の開始
第9章 ネイボップの時代
第10章 商事会社から植民地支配者へ
第11章 東インド会社の解散
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
48
これも20年ぶり位の再読。主にイギリス東インド会社についての歴史を綴ったもので、こなれた文章が大変読みやすい。オランダとの競争に敗れ、インドネシアからインドに転進したのが後のイギリスの運命を大きく変えたと思う。また途中に南海泡沫会社の顛末がかなり詳しく述べられているのも本書の特色で、そのあたりからイギリス議会との関係を説き起こす。終盤インドを軍事支配し、それが結局会社の収益性を落としていくあたり、後のイギリス自体の運命を予言するような展開。また国内の諸勢力との政治的争いも興味深かった。お薦めできる良書。2019/12/05
ぼちぼちいこか
20
ヨーロッパ諸国が東アジアに進出し始めた17世紀初頭。イギリスはスタートが遅れ、胡椒の輸入もわずかであった。それが時代が進むにつれ輸入品も、スパイス、綿製品、と変わり、東インド会社の経営も商社から政治、行政支配と変わってくる。そしてインド人同士で争わせ、阿片を栽培し、中国進出を果たす。一商社が自国の政権と結び、他国を植民地化する行程が書かれていた。途中、株価の下りでは読むのがダレてしまったがコンパクトに歴史がわかって良かった。 2020/09/30
coolflat
17
東インド会社はプラッシーの戦いにより性格が変わる。単なる貿易会社から植民地支配を行う総合商社、或いはそれ以上のものに。元々、東インド会社の営業内容は、現地の産物を販売して、商利を稼ぐところにあった。しかし利幅をあげるためには、他国の商人や現地商人の競争を排除しなくてはならない。プラッシーの戦いは競争者フランスの排除を目的したものであり、同じ論理で、現地商人や支配者を排除するために商事会社が軍を用いた。プラッシーの戦いの後、獲得したディワーニー(徴税権)が重要で、これにより植民地支配の一歩が踏み出された。2016/04/23
むらきち
12
東インド会社の誕生から解体までの概略の本、ではあるのですが、やたら詳しく株式投資について書かれており、株式投資が東インド会社とともに発展してきた様子や、当時の雰囲気がよく分かります。これは個人的に嬉しい誤算でした。この時代のバブルと大恐慌は本当に面白い。株取引の流動性が高まり、資金を集めやすくなったことで、後の産業革命に影響を及ぼす会社たちが生まれることが出来た半面、怪しげな〝泡沫会社〟がいくつも誕生しています。ネットで資金を集めやすくなった現代でも、似たような事は起きるのでは。2020/10/30
ジュンジュン
11
古い本(89年刊)ではある。今日の水準から見れば、修正すべき点も多々あるのかもしれない。が、新書の本分が初学者への教養書だとすると、本書は充分その務めを果たしている。まず分かり易い。1600年の設立からインド帝国に取って代わられるまでの流れがとてもスムーズ。そして、数ある東インド会社の中でなぜイギリスが勝ち残ったのか?一企業がなぜインドを支配できたのか?などの疑問にもしっかり答えてくれる。2024/10/02