内容説明
わたしは、いま、350ぴきのオタマジャクシを育てている。金魚のA金という先生もつけてやった。そろそろ、田に放さなければ…。でも、日でりつづきで、水のない田ばかり。とほうにくれた、わたしの目の前に、雨雲をつれた巨大なSLが―。太平洋戦争のころ、友だちの林少年が、希望をこめて24色クレヨンでかいた“ゆめ列車”がやってきた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レモン
36
350匹のオタマジャクシを育てる著者の福永先生。日照り続きで田んぼに帰したオタマジャクシたちのピンチに、幼少期の友人が描いた24色ゆめ列車がやって来た。タイトルからワクワクするようなカラフルファンタジーを想像していたが、少年期の戦争体験が描かれる重めのお話。林少年の心優しさ、伊吹姉妹の残酷さが心にずっしりしたものを残す。乗り込んだ瞬間は楽しそうなゆめ列車も車両を経るごとに不穏な雰囲気に包まれていく。単なる大団円で終わらないところがクレヨン王国シリーズの魅力。2024/04/19
かのこ
32
クレヨン王国作者の「わたし」が金魚のA金先生と挑むオタマジャクシの育児と、少年時代の戦争体験が交錯するファンタジー。 回想される幼なじみ・林くんに、実体験ならではのリアルな重さがあり、子供の頃一度読んだきりだと思うのに、強く印象に残っていた。キラキラとした24色ゆめ列車に込められた思い、金色のたからの車の中にあった本当のもの、、きっとこれからも忘れられないと思う。2017/09/22
のゑる
2
小学生の時以来の再読で、美しくワクワクするタイトルなのになぜかあまりいいイメージがなく、読んで納得しました。怖かったんです。おたまじゃくしたちとA金先生のやりとりがほほえましく、朗らかでのどかな序盤から、ゆめ列車の各号車でゲームのオンパレードが楽しく愉快な中盤、そして終盤にかけてのスリリングな展開……。戦争というと昔のことと思っていたあの頃、日常から平和が消えていくことは今の方がより恐ろしく思えました。児童だけが読むにはもったいないシリーズです。2019/12/17
あさがお
1
自分が今まで読んだシリーズの中でも、訴えるものが強い感じ。林少年の話はせつない。でもそれだけじゃなく、あたたかい気持ちにもさせてくれる。クレヨン王国のシリーズは色々なものが詰まっているなー。2013/12/31
kokekko
1
初めて読む気分の再読。作者が自分の夢と現実の中を行き来するように物語がすすむ。間違っても児童書ではない(と思うのだが小学生の自分は案外「ばかだなあ」とか思いながら読んでいた)。『全員同じものをイメージしなければならない』という課題や、狂信的なハサミたちなど、多くのメッセージが、クレヨン王国にしてはかなり強いタッチで描かれている。でも読み終わったときに悲しみよりもほっとした感覚が残るのは、愛すべきキャラクターたちと(A金先生!!)こどもたちのおかげかな。不思議な世界に私たちは生きている。2011/12/27