感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
2
お目当ての「ペテルブルグ」は、凄まじい読み応えだった。悪疫をもたらした沼地に建設された、カオスと霧の都市ペテルブルグ。“走り去る大通りの無限”と、“それとともに走り去る交差する幻影の無限”が、ただ悪夢のように目くるめくってゆく物語に幻惑されっぱなしだった。封じられた沼沢地の瘴気がいつしか充満し、主要人物たちの魂を中毒させる。革命前の混沌。合わせ鏡の如く増殖する錯乱と狂気が、ほぼ二日間に凝縮されている様は、圧倒されて息苦しいほど。分裂した主人公ニコライ・アポローノヴィチの行動が招く結末まで、すっかり呑まれた2013/03/23
quinutax
0
ペテルブルグの読者を発狂寸前にまで追い込む力業に何度も倒れそうになりながら読了、いやはや都市文学としてのペテルブルクの霧に包まれた幻影の中、僕らはその眩い色彩にどれだけ翻弄されたことか、赤き死の仮面のようなドミノの跳梁に、首くくりの瞬間に、党員の騙しあいに、爆弾の時計の刻みに急き立てられて、本当に奥深い街に迷い込んでいたのだなと呆然とする。そして得も言われぬベールイの苦しみと象徴の連続するカッコよさに痺れきってしまうのだった。2017/09/13