出版社内容情報
【内容紹介】
ロッキード疑獄とは、田中金脈事件の一環であり、ひいては、日本の保守支配体制の構造的腐敗そのものの表われである。5億円収賄の発覚から田中元総理の逮捕にいたるまで、田中批判を戦闘的に持続させていった著者の論稿の数々は、困難な状況を切り拓き、現代ジャーナリズムの質を変革しつつある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koji
15
古い文庫本で小さな字でぎっしり445頁。再読とは言え、読み終えるのに苦労しました。下巻は専らロッキード事件(田中角栄逮捕まで)。リアルタイムの月刊誌、週刊誌の記事が中心で、そこに後から加えた「著者自身による解説」を挟んで研究書の体裁を取っています。再読しても感想は変わりません。即ち時間に追われた突っ込み不足の所は多々あれど、著者の日本政治の現状への憤怒の爆発に対する共感です。結局私が、数多の田中角栄礼賛に同調できないのは、本書が展開する論理と倫理を超える物が出て来ていないことによることが改めて分かりました2022/02/27
nobody
11
角栄は復権している、即ちロッキード事件と田中金脈は風化すべくしてした。角栄逮捕を契機に政界浄化がなろうという立花の予測は悉く外れている。ロッキード事件の相貌を正確に後世に伝え損ねた。「事件の核心」を読むとああもうアプローチするのはやめとこうという気になる。立花も、3ルートの説明もピーナツ・ピーシズ・ユニット領収証という名称の由来も既知のこととして改めて解説しようとしない。ロッキード事件の動態を同時記録したものであり、「ロッキード事件とは何か」を落ち着いて考察したものではない。それを客観的に総括したければ、2021/07/28
Booske40
4
下巻はロッキード事件関連で児玉誉士夫に多くのページが割かれている。調べれば調べるほどおもしろいネタが掘り出されて、立花さんのジャーナリスト魂に火がついてるのかわかる。それにしてもロッキード事件の証人喚問の中継には小学6年生ながら釘づけにさせられた。2022/05/22
代理
3
田中角栄はテクノクラート。目的より手段の人。幹事長が到達点。金権よりも独裁への傾向のほうが問題。『立身出世』の悪い擬人化。凄んで集めたカネを笑ってばら撒く。田中角栄を『面白いオジサン』ぐらいのイメージしか無い人に薦めたい。体験に裏打ちされてしまった狭い世界観と、黒光りする知性。2020/03/28
moonanddai
3
この本の中で、野坂昭如が、田中角栄は金「中毒」だと解説していた。なるほど、確かにアル中の人は素面の時は非常に「いい人」だが、アルコールが入ると人が変わる。田中角栄は毀誉褒貶の多い人だが、金に絡まない部分で評価が高かったのかもしれない…。最近「田中角栄」という本がよく読まれている(私も読みました)が、この本も読んで評価のバランスを取るのも必要かも…。2013/06/20