出版社内容情報
【内容紹介】
国引き、八岐大蛇、国譲りなど日本神話のなかで出雲の果たす役割はなぜか大きい。大和朝廷にとって幽界の地出雲とは、どのような意味を持っていたのか。本書は、記紀、風土記、神賀詞などの文献資料と歴史学、神話学の蓄積を縦横に駆使しながら、巫覡祭祀説によって出雲神話の実像を明らかにする。スサノオ、オオクニヌシ、スクナヒコナなどなじみぶかい神々の世界をとおして日本神話に新たな視点と生命を与えた。
2つの出雲神話の食い違い――『出雲国風土記』の多くの伝承の中で、記紀に共通もしくは近似の伝承があるかというと、ほとんど見出せない。また逆の場合もそうである。また記紀と共通して登場する神格にも、同じ物語は、ひとつも見あたらない。これは不思議なことである。簸の川の上流のできごととされるスサノオの有名な八岐大蛇の話も、『風土記』の大原郡斐伊郷の条を見ても、触れられていない。『古事記』のオオナムチの生い立ちの話にある、八十神によるさまざまな迫害や、根の国での試練の話も、『風土記』にはない。神々の神統譜も、どうやら記紀のそれとはかなり異なったかたちで考えられていたらしい。――本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
8
古い本なのだが、その分、テキストにするには良いかも。2010/11/16
bluemint
7
国譲り神話は史実の反映か?朝廷の意を受けた出雲国造一族が、物部氏や朝廷貴族のバックアップを得て西部に進出し、オオナムチ(大国主)の祭祀権を握ったということらしい。スサノオは元々紀伊の海人の信仰だったが彼らが出雲に移るに従って海神から農神へと変化した。などかなり精密な神話と風土記の解釈で出雲神話が解き明かされる。辺境の地と考えられていたが、加茂岩倉遺跡や荒神谷遺跡の発見がどのように古代史に影響を及ぼすのか、まだ研究途中のようだ。2022/03/09
よいおいこらしょ
6
大和と対抗していた出雲勢力は、どのようにして日本神話に取り込まれたか。また、取り込まれる上でどんな変化があったかのかを読み解いた本。タケミカヅチやスサノヲは後世からの挿入だという大胆な主張には驚いたが興味深い2021/02/16
狐狸窟彦兵衛
4
読もう! と思ってから、10年近く本棚に居てた新書。ようやく読了。なんでもかんでも「大和朝廷のねつ造」で片づけたらあかんで、ということを多角的に述べていて興味深いです。「神話」のもつ「リアリズム」というのを考え続けるのって、すごいと思います。「神様」の系譜が、ここと、ここがつながるけど、ここは、不自然・・・と考えていくと、日本列島の古代の人の行き来が透けて見えるという構造。いっぱい神様の名前がでてきて、だれがどれかわからんようになりますが、古事記や風土記をちゃんと読みたくなる書物です。 2014/03/04
Hiroki
2
mybook 再読。(昨年末からココに記録せずに読み飛ばしていた内の一冊)2022/03/26
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- 和書
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