出版社内容情報
【内容紹介】
異なる文化に接した場合の〈カルチュア・ショック〉は、日本人において特に大きい。そこには、日本社会の〈タテ〉の原理による人間関係と、ウチからソトへの〈連続〉の思考が作用している。本書は、欧米・インド・東南アジアなど、ソトの場での日本人の適応と、そこに投影された〈ウチ〉意識の構造を分析し、〈強制〉と〈逃避〉という2つの顕著な傾きを指摘する。著者のゆたかなフィールド・ワークをもとに、国際化時代の日本人の適応条件を考察する本書は、ベストセラー『タテ社会の人間関係』につづく必読の好著である。
システムの発見――ゴムの産地として名高いマレーシアでは、英国統治時代からいわれてきた「ラバー・タイム」というのがある。ゴムのように伸びる時間の感覚である。熱帯ではどの国でも多少こうした傾向があるのがつねである。これに対して、約束した日時を守らないといって2年間も憤慨しつづけて過す日本人などがある。何度か同じように日時が守られなかった経験をもった場合には、怒るよりも、まず「なぜだろう」と考えるべきである。必ず何か理由があり、そのおくれ方自体に一定のシステムがみつかるものである。たとえば、1ヵ月といった場合はだいたい2ヵ月を意味するとか。表現というものは必ずしも実際の数を意味しないということは、どこの文化にもあることである。――本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
32
私達には日本というシステムが組み込まれており、カルチャー・ショックは異文化を処理しきれなくなった時に起きる。この本が書かれた約40年前は外国との往来でのみ発生したが、グローバル化やネット化が進んだ今ではカルチャー・ショックはもっと身近になった。外国人観光客の横暴な振る舞い、遠い外国での残酷な映像などがその例だ。時代は違ってもカルチャー・ショックが起きるメカニズムは同じ。私達は、これを憎悪や侮蔑、卑下や自虐などの負の感情につなげないようにカルチャー・ショックをマネジメントする能力を身に付けなければならない。2015/02/05
ちくわん
20
1972年11月の本。システム、ネットワークなど今では何でもない単語がバンバン登場することに驚く。社会人類学の話であるが、読みやすく分かりやすく勉強なる本。高校生はこういう本を読むべきだ。この時点でレヴィ・ストロースの構造主義は知られていたのか。他書も探そう。2022/02/15
牧神の午後
9
もちろんグローバル化は刊行当時(1970年代)より進んだ今となっては、特に日本企業による海外子会社のマネジメントも敢えて「日本流」を貫く事で上手くいっている事例も出てきた。それでも本書に書かれているような日本社会の「内」「外」に代表される文化的な特性ってのは今でも根強いし、定期的に日本人スゴイ、あるいは真逆の英国やどこぞに比べてダメダメな本がベストセラーになるってのは、本書の指摘があまりに本質的だからなんだろうな、と感心しきり。でも最後の途上国援助に関する部分は、国連納付金問題もあったりして、少し疑問符。2017/07/26
マネコ
8
日本人の価値観について海外と比較しながら改善点を探す内容です。題名とは少しずれがあるので、そこは注意が必要だと思います。2019/04/09
aponchan
8
日本人論として「確かに」と思いながら読了しました。 40年前に書かれた本でありながら、いまだに当てはまるのは、これだけグローバル化が進む世の中で危機感を覚えました。 まったくジャンルは違いますが、「バッタを倒しにアフリカへ」におけるモーリタニアでのバッタ学者コメントや、「日本はなぜ負けたのか 敗因21か条」からも同じ日本人の本質が見え、妙に腹落ちしました。 2018/05/18
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