出版社内容情報
徳川家康の次男として生まれ、小牧・長久手の合戦のあと、人質同然に豊臣秀吉に養子となり羽柴を名のったのち下総国結城氏に養子に出された秀康。関ヶ原の合戦では関東に残り上杉勢の動きを抑え、戦後越前六十八万国を与えられながらも悲劇が待ち受けていた!
内容説明
徳川家康の次男でありながらもその出自を疎まれ、養子という名の人質として豊臣家に差し出された結城秀康。だがその複雑な生い立ちをも糧として、誰もが一目置く存在に成長すると、その気概と才気に養父・秀吉は警戒を抱き、実父・家康は再接近を計った。下総結城家を継承し、関ケ原の戦いでは宇都宮で上杉景勝を牽制。越前転封後は弟の将軍・秀忠により『制外の家』とされる。父との葛藤を抱えながら将軍の兄として生涯を終えた男の短くも激しい生き様。
著者等紹介
志木沢郁[シギサワカオル]
1955年、東京都生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。2003年、『嶋左近戦記信貴山妖変』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鐵太郎
7
結城秀康・徳川家康の次男。母が身分の低い側室であったため疎んじられ、嫡流からはずされたと言われますが、後半生の家康への忠勤と武勇は目を見張るものがあり、秀忠の控え目な性格と対比して人間的には一回り大きい存在だったとか。その将器を期待されつつ、ついに戦場で指揮官ぶりを発揮することもなく、34歳で逝ったその生涯。死因は梅毒か? 劇的です。こんな人物が、歴史の中に埋もれていたのですね。志木沢郁さんは、なんとも面白いタッチでこの人物を解釈し、描写しています。2005/11/10
BIN
4
徳川家康の次男で秀吉の養子となった結城秀康を描いた作品。秀忠と違って剛勇をもって知られるが、実際には戦をするチャンスが頂けなかった残念?な人。この小説では誰からも好かれる傾奇者でやたらと美化されているような気がする。鬼作左がいい役している。個人的には家康嫌いなのは変わらないが、秀忠が兄に甘える人の良い人物で好感度アップした。家康に嫌われたお陰で生母と長い間一緒に入れたのはこの時代の人間として幸せだったのかもしれない。2013/04/11
結城あすか
4
家康の次男で秀吉の養子になったという興味深い人物ではあるけど、天下取りの表舞台に出ることが無かったからあまり知られることの少ないマイナーな武将の1人にょ。一般には秀忠と違って勇猛な武将というイメージの強い秀康だけど、本格的な戦をする機会に恵まれなかったというのも意外だったにょ。今わの際に「いくさ」とつぶやいたと伝えられる点で、何かと陰謀説の好きな人には天下取りの戦をしたかったのかと疑われることが多いけど、単純に一度は存分に戦場で戦ってみたかったというのが実感できるように思える作品になってるにょ。2012/05/15
kuroshima
3
戦国の武将としては珍しい位、快活な人物として描かれている秀康。まるで青春小説を読んでいるような切なくも爽快な読後感です。2016/03/21
安国寺@灯れ松明の火
3
自らの複雑な生い立ちに苦悩しながらも、器量に優れた颯爽たる武将に成長していく結城秀康の生涯を描いています。人選も面白いと思いますし、いつもながらの読み易い文体も私好みなのですが、テーマが出自とそれに対する葛藤というやや重いものなので、人物の「愛嬌」を描き出す作者の良さがもうひとつ見られないのが残念です。個人的には「上杉謙信」「立花宗茂」「可児才蔵」といったあたりの作品をお薦めしたいと思います。2010/01/16