感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんこつ
5
全三部の第一部を読了しただけだが、すでに大きな衝撃を受けている。現代中国文学でも屈指の抗日小説と称される本作の舞台は日中戦争期の日本軍占領下の北京。もちろん当時蛮勇をはたらいた日本軍への痛烈な批判が各所に散見されるのだが、それ以上に老舎の筆は日本軍に協力した北京(北平)の人々へと向けられる。その人々の精神はどのような旧習の文化によってつくられているのか。戦禍にあえぐ無辜の市民の叫びを言語化するとともに、自国文化への強烈な反思の精神がこの小説には脈打っている。知識人の知と情に対するあり方を見た思いだ。2018/09/26