内容説明
これから、たぐいまれなる物語をお聞かせしよう。主人公は、月経中の女性をたちどころに見つけだす特異な能力をもつ青年ハッサン。が、その鋭すぎる嗅覚ゆえ、彼の人生は苦悩に満ちている。片や、夫からの一方的なセックスに満たされぬ人妻ウィサーム。若く美しい彼女は、愛に満ちたセックスに憧れをおぼえずにはいられない。そして、反社会的に生きる一組の夫婦。強い愛情と信頼で結びついていながらも、彼らの家庭にはある脅威が忍びよっている…四人の前途に何が待ちうけているのか、彼らがどう変わっていくのか、とくとご覧いただきたい。
著者等紹介
アブダルハミード,アマール[アブダルハミード,アマール][Abdulhamid,Ammar]
1966年、シリアで有名な映画監督を父に、スター女優を母に生まれる。ウィスコンシン大学で歴史学の修士号を取得。シリアの首都ダマスカスで出版社を運営するかたわら、作家を志す。処女作にあたる『月』は7カ国に版権が売れ、その独自性が高く評価された。シリア在住
日向るみ子[ヒュウガルミコ]
英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
阿呆った(旧・ことうら)
31
シリア作家によるイスラム文学★menstruation(月経)→邦題:「月」月経だと生々しすぎたのかしら?内容も、お、おう…て感じだし。★若い主婦がレズビアンにはしり(というのは、男と浮気すると、自慢の種に吹聴される恐れがある)、既婚男性に裸で突進する女性がいたり、月経を嗅ぎ分ける男性がいたり…。★イスラム教ていろいろ厳しそうなイメージだったけれど、断食終わった後めっちゃ食べるのと同じで、実ははっちゃけてるの??本当ではないけど、疑問を投げかけるために扇動的なストーリーにしてるの??★わからん(・ε・`)2015/11/05
きゅー
16
原題は『Menstruation』、翻訳すると『月経』。たぶんこれではあまりに露骨すぎるので翻訳では『月』としたと想像されるが、内容は原題通りのものとなっている。この作品ひとことで言えば、セックス(性別としてのsexでもあり行為としてのsex)についての小説。イスラム教の規範に対して「性」という観点から疑問が投げかけられており、リベラルな主義を持つ個人の苦悩と同性愛を軸として、シリアにおける抑圧の姿をかいま見れた。そうした世界で、これだけの小説を出版できる著者と出版社には賛辞を送りたい。2012/03/10
madhatter
7
再読。イスラム圏で本書が書かれたことは確かに衝撃だ。だが同時に、イスラム圏のように抑圧(偏見かも)がある文化でなければ書かれなかった物語だろうとも思う。夫妻は作中で尊敬を集めているが、ハッサン達は必ずしも彼等のように急進的に生きようとはしない。誰もが強く生きられはしない。猶予を取り、抑圧のある世界を利用しつつ生きる強かさの方が、リアルで印象に残る。ヴェールを外すことだけが抵抗ではない。ヴェールの下でなされる抵抗もある。ハッサンの成長はそれを知った故だろう。「全か無か」って、ある意味単純な子供の発想だよな。2011/02/19
Porco
6
シリアの作家がシリアを舞台に、性をテーマに書いた小説です。内戦勃発後、どうされているのか。 作者はアメリカ留学もした人ということもありますが、イスラム圏からこういう小説が生まれるということが、イスラム圏へのイメージを改めさせてくれます。2014/09/30
あいち
4
読み始めはファンタジーか??と思ったけれど、イスラムの世界の中で生きる人々の性生活が垣間見える話。もっと禁欲的なのかと思ってたけど、抑圧されているからこその反動なのか奔放すぎる。現実がどうなのかは分からないけれど、実際に当たり前のように用意されていた世界に身を置いていると、感受性豊かな人間は疑問を持つだろう。どこで折り合いを付けどこで自分を納得させるか・・・結局は自分自身と対峙する事になるのかなぁ。それにしてもこの作者の身は安全なんだろうか。ふと思う。2012/10/22
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