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内容説明
都内某所にある『碧山動物園』の飼育員を務める青年・鳥羽晴樹は悩んでいた。絶滅危惧種の肉食獣・アムールヒョウのガイア―。彼女を見るために幼い頃から動物園に通い詰め、その想いを胸に飼育員となった晴樹は、彼女の余命が僅かと知り、その死と、そしてその後の自分との向き合い方を見失っていたのだ。だがある日、悩む彼の前に不思議な少女が現れた。柵から逃げた暴れ馬をたちどころに落ち着かせ、知らないはずのその馬の名前まで言い当ててみせた彼女はなんと『動物の言葉が分かる』というが―?
著者等紹介
美奈川護[ミナガワマモル]
第16回電撃小説大賞“金賞”受賞作『ヴァンダル画廊街の奇跡』(電撃文庫)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
68
最近お気に入りの美奈川さんの作品だったので、数年ぶりに再読。メインキャラクターのハルや動物の言葉がわかるという理央よりも、孤高のアムールヒョウと爬虫類担当の一條が印象に残っていた。私はどうもクールなタイプに弱いらしい。好きなだけでは務まらない。好きでなければできない飼育員というお仕事。物言わぬ動物達に導かれて、登場人物それぞれがまた明日へと進んで行く。お仕事小説はやっぱり面白い。2020/07/19
papako
62
何故か気になる動物園もの。でも読むといつもモヤモヤします。それは動物の事は想像するしかないからかも。彼らは一体何を思い生きているのか?と。今作は動物と話せる不思議ちゃんが出てくる、ちょっとだけファンタジー。動物園で飼育されている野生動物の誇りがテーマ?美しいアムールヒョウに恋したハル君が飼育員になり、新たな一歩を踏み出す。話さなければわからないわけではない。それでも彼らの声が聞きたいと思わずにはいられない私達人間なのかも。きっとまた動物園もの、見かけたら手に取るんだろうなぁ。2018/04/23
た〜
43
【キャラ重視型】1頭のアムールヒョウに一目惚れした少年が彼女にストーカーしながら大人になり、ついには飼育員にまでなってしまう。ということなので飼育員成長物語あるいは(一方的)異種族愛情物語かとおもいきや、実は不思議ちゃん観察記録でした。でも最後はちょっと哲学的に、そして綺麗にまとめてくれます。2013/11/15
dr2006
35
美奈川さんの作品はまだ3冊目だが人物造形が好きだ。ラノベ文庫でファンタジーだからあらぬ誤解を生みがちだが、社会や環境の描き方が真面目で現実的なので、対比的にファンタジーが引き立つ。本作は動物園の若手飼育員晴樹と、動物と言葉を交わす事ができる物販アルバイト理央の物語だ。飼育員は動物の飼育の為に動物の言葉が理解できたらと思うが、動物園の中で死を迎える動物たちの最期の言葉を聴くことはむしろ辛いことなのではないか。野生への畏敬の思いを改め、ペットではない動物園の動物と飼育員の仕事に対する思いが変わった。良作。 2016/09/06
ネムコ
26
動物の言葉がわかる――というあらすじから、もっとファンタジー色の強い、軽い読み物かと思ったら、なかなかどうして、骨太な飼育員物語でした。動物の守り人(キーパーズ)として生きる。その覚悟には「ソロモンの指輪を持っているかどうかなんて関係ない」。老飼育員の「動物園の飼育員は一生をかけるに値する仕事だ」という台詞がこのお話の全てを表しているように思う。2013/09/25