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内容説明
時は文化文政期の江戸。幕末なんてどこ吹く風の太平楽な町の片隅に、駆け出しの浮世絵師がひとり。女性と見紛うばかりの美貌に、優れた才を持つ。名は石蕗蓮十という。蓮十の筆にはふしぎな力が宿っている。描くものに命が吹き込まれるのだ。でも、それは内緒。蓮十の周りはいつも賑やかだ。蓮十の世話を焼きたがる地本問屋のお嬢さん小夜に、悪友の歌川国芳。彼らとともに蓮十は、今日もふしぎな筆の力で町で起こる事件を解決することになり?江戸の情緒あふれるふしぎな浮世絵物語。
著者等紹介
かたやま和華[カタヤマワカ]
第5回富士見ヤングミステリー大賞佳作受賞作『楓の剣!』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優愛
115
駆け出しの浮世絵師である蓮十と世話焼きの小夜の関係が素敵。描くものに命が吹き込めるという不思議な力を持つ蓮十の絵が今宵解決する事件一つ一つに惹き込まれました。桜褪めのお話が特に好き。桜の花は色が褪せやすく、散りやすい。それでも人はその有り様を美しいと言う。口を揃えて儚いと。結局はそれが全て。そう思えた時にはもう皆次の春の訪れを、二度目の桜を待っている。蓮十の絵を待っている人だって似通った思いに違いない。追うのも追われるのも一人きり。それなら手を繋ぎ歩く道が断然好き。思わず入り込みたくなるような世界観です。2015/01/21
mocha
91
描いた絵が動き出すという才を持つ絵師・蓮十。彼の絵をめぐる不思議な事件の謎解き話3篇。どれも謎の真相は「やっぱりね」という感じだけど、暮れからお正月、早春の話でちょうどタイムリーに楽しく読めた。絵から出てきた兎、蛙、亀が鳥獣戯画みたいで愉快。ファンタジックで、恋愛模様にやきもきさせられるところも若い子向けライトな時代物の王道。2017/01/06
ひめありす@灯れ松明の火
78
蓮十の特性である『描いた絵が動き出す』所をあっさり見逃してしまったので、最初はちょっとぽかんとする所がありましたが、ちゃんと読み返して納得しました。どうも天然鈍感なだけではなさそうな蓮十と、いかにもおきゃんだけどやっぱりお嬢さん育ちで妙な所でおしとやかな小夜のほのぼのした恋愛事情を楽しみつつ読みました。敵と書いて友と読む国芳はちょっと品のない台詞かなあ~おいおいと思う所もあったけれど、でも最後は全部猫になっちゃう所が可愛いです。蛙兎亀の鳥獣戯画トリオも可愛かった~。彼らが活躍する所ももっと見てみたいです。2014/02/15
kishikan
75
時は文化文政、というと天災地変、文化隆盛、江戸期を語る際話題に尽きない時代。そうした背景の中で売り出し中の浮世絵師蓮十と彼を慕う小夜嬢の淡い恋と江戸の町に起きる事件をファンタジック・ホラーで綴った時代小説。 時代ものというとお堅いイメージ。でも、さすがメディアワークス。かたやまさんも時代考証をしっかりしつつ、現代人っぽい恋心を描いているところはさすがです。どこか古典落語の題材にあったような三話ですが、それはそれ。世にも不思議な時代小説ということで。「澪つくし・・」のようにシリーズ化されることを期待しつつ。2012/05/25
hirune
62
蓮十の生い立ちは暗いし、起こる事件も明るいとは言えず 最後の火消し夫婦の件なんてまごう事なく悲劇なんだけど、蓮十と小夜お嬢さんの夫婦漫才的な絡みが対照的に楽しくてバランスが取れて良かったです。あと絵から飛び出して居座る兎 蛙 亀のトリオも煩くて可愛い(^^;)宿敵(ともと読む)の国芳さんもいいキャラでした。「しんみりねっこり真猫になる」って表現は初めて聞きましたが普通の言い回しですかね??2018/12/23