感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベーグルグル (感想、本登録のみ)
52
柚子といえば四国高知の馬路村だけと思っていたら、その柚子がこの物語の舞台である徳島県の木頭村だと初めて知りました。木頭村に赴任してきた臼井さんが柚子栽培し村おこしをした話かと思いきや、後半にはまた違った展開に驚きの連続でした。ダム建設問題など発展に伴う環境破壊、そして悲劇には涙がこぼれました。時代が違ったらもう少し、違った展開になったのかもしれません。こんな実話があった事をもっといろいろな方に知って欲しいです。柚子栽培には18年もかかるのも驚きでした。#NetGalleyJP2021/09/16
ぶんこ
41
四国の柚子といえば高知の馬路村しか知らなかったのですが、その馬路村の柚子のルーツがお隣徳島県の山深い僻地木頭村だったとは。柚子バカと言われて村民の多くから反対されていた柚子栽培。柚子の実を収穫できるまでには18年も必要だとは驚きました。それを枸橘の木に接木する方法で短縮するまでと、その苗木や長年の苦労の末に確立した栽培法を、知りたいとこう日本各地の農家に惜しみなく与えてきた木頭村の栽培農家。それがダム建設に始まる村民の対立、誹謗中傷。柚子の成功を忘れた村民の向ける目の狭さに愕然とし、藤田さんの無念を思う。2021/03/17
anne@灯れ松明の火
38
ノンフィクションはあまり読まないのだが、「3週間で重版が決定」と知り、興味が沸いた。読んでみたら、一気読みだった。前半、臼木さんの柚子栽培の苦労も大変なものだったが、後半、中心になった藤田さんの苦労は臼木さんを遥かに上回るものだった。辛い生い立ちをも糧にし、自分よりも周りの人の幸せを願って行動してきた彼がまたあれほどの辛い思いをしなくてはならないとは……。 最後の最後に、思いがけない人物の名前が出てきて、心底驚いた。藤田さんの思いは、この人に受け継がれていたのかと胸が熱くなった。#NetGalleyJP2020/12/06
TATA
35
読友さんのレビューから。舞台は山深い徳島県木頭村。戦後林業以外の産業振興を目指しそれまで国内に大規模栽培の実績のなかった柚子栽培に取り組んだ物語。成功を収め柚子栽培は県外にも広がったものの、ダム建設計画に関連して村全体が混乱する中で隣県の後続組に追い抜かれ多くの得たものを失う。そして現代、どん底からの再始動。子供の頃に高ノ瀬峡に紅葉を見に行ったことがあるのですが木頭はまさに深山幽谷の里。山間の小村が経験したプロジェクトXでの成功と挫折には多くの学ぶべき示唆がありました。2021/01/01
りらこ
27
着眼点と行動力。その根底は何なのか。 柚子栽培を通して、村の人たちとの対立。それらがだんだんと、まさに実を結んでいく様は、柚子の香りにも似て爽やかでもあり、熱意と愛情とが両輪を成し進んでいく爽快さに溢れている。一転ダム建設をめぐる人々の対立と、それを軸として次々と降りかかる事象は、人々の気持ちの根底を、まさにダムの反対側の水一滴もない場所の砂利が露呈しているかのように露わにしていく。 疲弊し尽くす藤田氏の選択。木頭村という存在を通して、昭和から現在まで駆け抜けながら、私たちに重い問いを投げかけてくる良書2020/12/16