出版社内容情報
友達の産んだばかりの子のしゃっくりが聞こえる電話の奥 いらっしゃいついに本番が始まってしまった―「まひる野」所属の著者の待望の第1歌集。
山川 藍[ヤマカワ アイ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kum
29
穂村弘さんの本で紹介されていた歌集。463の歌のなかでも特に職場について詠んだものは、短い歌の中にその時の風景や感情が凝縮されているかのよう。あとがきを見ると、がむしゃらに働いた仕事を退職した後に仕事や家族をテーマに猛然と歌を作ったとのこと。「退職したことが大きな区切りとなり、それ以前が自分の中で物語のような感覚になった」という言葉が印象的。シュールなスパイスが効いた歌には、喜びや哀しみの懐かしい記憶とともに振り返ってこそ見えるのだろう滑稽さも見え隠れしていて、だからこそとてもリアルに感じられた。2021/03/31
kaizen@名古屋de朝活読書会
29
#山川藍 #短歌 p15 好きなだけお茶飲めることうれしくて一日2.5リットル飲む p17 この砂を覚えてしまいそうな気がする水もだと思いつつ踏む p19 その靴で歩けるのかと聞かれたら途端に歩けなくなる浜辺 p32 じゅうぶんに生きた気もする雨の午後誰かの菓子を勝手に食べる p93 細胞よ全部忘れろ入れ替われ短い爪で頭を洗う p101 片乳に注射を三つ打ってからきたのだ女湯で思い出す #返歌 百均の2Lお茶うれしくて一日3.5リットル飲む2018/06/26
きゅー
9
名古屋市在住の女性による歌集。偶然だが私も名古屋で暮らしており、光景が目に浮かぶ短歌もあり楽しい(図書館のスガキヤは鶴舞だろうか、それとも県図書館か)。好きな歌をいくつか。/「天国に行くよ」と兄が猫に言う無職は本当に黙ってて/うちにはもう猫は一匹しかいない撫ですぎないですり減るから/仕事いま三つしてると言えば皆「何を」も「なぜ」も聞かずに黙る/ラジオ英会話の例で男声に女声がすぐに家を教える/。仕事と家族のことを詠むことが多く、無職の兄が何度も登場する。しかしどこか明るくて暖かい。疾走感もあってクセになる。2023/10/09
浦和みかん
6
歌の内容は軽くない(職業詠が多く、非正規雇用を詠った歌など)のだけど、言葉遣いに軽やかさとユーモアがある。歌によっては、その軽やかさゆえに、なんだツイッターみたいだなあと思いつつ。 <涙腺の元栓さがす空港で出世したくてたまらなかった><猛烈な鼻血で起きる夜中なりもう片恋は美しくない><事務所まで戻れば四十円安い愛のスコール駅で飲み干す>2019/05/05
あや
4
職場詠も家族詠も猫詠もすべて良い。とくに猫の死を詠んだ歌が良い。私も同じ経験をしているので・・・2018/08/13