内容説明
1852年、マシュー・カルブレイス・ペリーは東インド艦隊司令官に就任した。アジア航路確保に向けた日本の開国と国交樹立が任務である。57歳と退官間際だったが、英雄的軍人だった兄へのライバル心と、世界における祖国の優位性確保のため大任を引き受けたのだ。彼はオランダを頼っては有利な条約を結ぶことは難しいと判断。長崎の出島ではなく、江戸への入港を計画する。翌年、エド湾からウラガという町の沖に船を進めたペリーは、武力行使をちらつかせジャパン政府との交渉を優位に進めるが、そこに開国を迫る世界各国と幕府高官が立ちはだかった…。黒船襲来で騒然とする中、世界では何が起こっていたのか?知られざる英雄ペリーを初めて描き、世界的な視点で幕末史を塗り替える、著者渾身の歴史小説。
著者等紹介
佐藤賢一[サトウケンイチ]
1968年、山形県生まれ。山形大学卒業後、東北大学大学院で西洋史学を専攻。93年、『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞し、本格西洋歴史小説の執筆を始める。99年、『王妃の離婚』で第121回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
47
黒船を率いて開国を迫ったペリ-。偉人らしからない人物造形は同著者の「ナポレオン」と同様なテイスト。スト-リ-は、偶然、平行読書中の原田伊織「知ってはいけない明治維新の真実」の「(黒船は、)[通説]武力を背景に、江戸幕府の開国を迫った。[真相]発砲厳禁を命じられたため、空砲を盛んに撃って威圧しようとしたが、幕府も庶民もパニックにならずお祭り気分で黒船を見ていた。」に添うような内容。江戸近代の幕府官僚に手を焼くペリ-。歴史の真実はどちらだろうか、興味深い。2021/03/11
おさむ
32
「ペリー日本遠征記」をベースに描かれた小説。黒船の時代からアメリカにとっての日本の位置付けは変わらない点、米国は常に国内と国際政治のせめぎあいになる点で等を再認識。米国の「上から目線」の歴史観もわかりますw。文体は著者お得意の漫談調。ペリーの人間味が溢れて読みやすい。2015/09/11
星落秋風五丈原
12
偉大な人も劣等感を抱えていた、という佐藤賢一御得意のパターン。2011/08/20
ゲグラン
12
黒船来襲を、アメリカ側(ペリーの側)からみた小説。中国という巨大市場の権益を得る為に必死で、となりの小さな島(しかも鎖国政策によってかなりめんどくさい国)に係わる事自体が無意味だった、そんな時代に、アメリカだけが持つ日本という島の地政学上の利点を、海軍軍人ならではの視点で見出す。決して行き当たりばったりの、軍人の征服欲からの来襲でなく、海軍司令官として準備を整えてからの来訪だったことに驚いた。また、幕府側もしっかりとした外交交渉を重ねることが出来ていたことにも驚き、ただ、腰を抜かしていただけでは無かった。2011/12/15
ふぇるけん
11
函館出身の私にとって、ペリーという名前は身近なものであった(ペロリ君というゆるきゃらもいる)が、実際彼の人となりについては何も知らなかったので面白く読めた。米国内での交渉や幕府とのやりとりはどこまで史実なのかわからないが、非常に臨場感があって読みやすかった。ペリー自身の遠征記も読んでみたい。2017/02/27
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