内容説明
非常勤講師として短大に勤める由樹は、衆議院議員の柏井惇と逢瀬を重ねていた。しかし、“あの男”の出現によって、由樹は心の奥底に眠っていた過去の記憶を揺り起こすことになる―。20年前に犯された男との、思いがけない再会。彼女の心は、言葉にできない複雑な感情で絡み合う。鮮烈な筆致で極限の愛憎を描いた、恋愛サスペンス長編。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年、岡山県生まれ。同志社大学卒業。93年、「おとぎ話」で第12回「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。2005年、『欲しいのは、あなただけ』で第12回島清恋愛文学賞を受賞。09年、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』でボローニャ国際児童図書賞を受賞。米ニューヨーク州ウッドストック在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mariya926
99
『瞳のなかの幸福』が良かったので、この本も読みました。読みながらサスペンスって何だろう?と思い調べてみたら『宙ぶらりん』でした。なるほど!本当に宙ぶらりんな物語でした。ラストどうしたいのか?途中まで不倫恋愛小説としてどうなるのか楽しんで(?)いましたが、急に状況が変わります。そしてえっ!?と思う結末。うーん。私だったら理解できないという宙ぶらりんな状況で終了。なるほど、だからサスペンスなのねって思いました。大人の恋愛として楽しめる作家さんなので、これからも全部読んでみたいです。2024/07/09
あつひめ
96
人は生きれば生きるほど心に刻まれる思い出や傷が増えていく。それは見ぬふりをしたり忘れたふりをしても消えるわけではない。女としての深い傷が20年ぶりに何かに引き寄せられるように、改めてその出来事を裏打ちするように、現れた男。そうか、その傷が痛いのではなく、その時に置き去りにされた心が痛かったのかと同じ女としてそのモヤモヤは想像できる。再会しても手に入れられない幸せ。人の心が曇るのは職業柄と言うこともないだろうけど…政治家である彼のずるさが人としては許せない…。この感情こそが作者の思う壺だったのかも?2014/03/03
えりこんぐ
63
20年前にこんな目に合わされた男に、憎む以外の感情が持てるとは...。どんな出会い方をしても、惹かれる人には惹かれてしまうということ? 再会してからが、意外な結末だった。本当の事を告発しても揉み消されそうな気もするけど。【図書館】2020/09/07
優希
63
不倫の物語ながらも色褪せない恋愛の物語でもあると思いました。由樹と惇のふわりとした関係が最後にドロドロになっていくのが、由樹の心情の動きと連動しているようです。しかも過去無理矢理関係を持ってしまった真山の存在が心の奥底にあったのですね。恨み、憎しみながらも、会いたくて恋しい想いが渦巻くのがとてもリアルでした。20年の間、抱えていた色褪せない想いが、真山との再会によって沸き上がる。痛むのは当時の深い傷か置いてかれた心なのか。存在するもの、変わりゆくもの、極限的なラスト、全てが永遠なのかもしれません。2015/05/31
ゆみねこ
35
初、小手鞠さん。19歳の時の恋愛を心の奥底にしまったまま39歳になった主人公由樹は、若手政治家惇と、大人の恋愛をしている。どんなに素敵な恋人であろうが、不倫には共感を覚えないので中々面白さを感じられず。ラストで驚愕の展開になるけれど、身勝手な政治家や、その不祥事をもみ消したり罪をかぶる秘書、現実にこんな輩ばかりだったら、政治不信に陥る。。2013/05/11