出版社内容情報
頭のなかの死体をいかにして出すか。その命題に貫かれた男の数奇な人生とは
頭に巨大な瘤を抱え生まれたボズ。瘤の中には双子の片割れの死体が埋まっていた。現実に馴染めず異能の子供を集めた施設に収容され育つが、彼の周囲には常に死の影があった。50年以上にわたる男の数奇な人生を描く!
内容説明
1955年。頭に、双子の片割れの死体が埋まったこぶを持って生まれ、周りの人間を次々と死に追いやる宿命を背負った男―ボズ。異能の子供ばかりを集めた福祉施設「白鳥塾」に収容され育つが、そこで出会った少年少女―ヒョウゴ、シロウ、ユウジン、アンジュらによって、ボズの運命は大きく変わっていく―。70年代の香港九龍城、80年代のカンボジア内戦を経て、インド洋の孤島での大量殺戮事件にいたるまで―底なしの孤独と絶望をひきずって、戦後アジアの50年を生きた男の壮大な神話が、いま開幕する。
著者等紹介
真藤順丈[シンドウジュンジョウ]
1977年東京都生まれ。2008年『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、『地図男』で第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞など、主要新人賞4賞を受賞し注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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誰か1人は死ぬ本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
76
凄い小説だ。頭のコブに双子の兄弟の死体を埋めたまま生まれ、少年時代はその容貌を隠すため麻袋を被って過ごし、後にその由来故に墓頭(ボズ)と呼ばれた男。彼の廻りには常に死が付き纏う。登場人物達の心情や物語の全てが理解できた訳ではない。然し乍ら、時折見せる繊細な筆致や圧倒的な破壊力を持ったこの奇妙で哀しく、美しい物語を紡ぎだした作者には、物書きでは無い自分でさえもその感性に嫉妬を覚えてしまう。作者の小説を読んだのはこれで5作目、どれも驚くような作品ばかり。当分目が離せない。2017/02/16
*maru*
38
真藤さん初読み。生まれながらに彼は墓だった─。鬼の子、麻袋を経て、やがて墓頭(ボズ)と呼ばれるようになった男の波乱に満ちた一代記。父親の失踪を調査する過程でボズの存在を知った語り手と探偵は、彼の足取りが途絶えたある島へと辿り着く。ボズの過去を辿る旅の水先案内人となる養蚕家は語り出す。彼のすべてを。過去と現在が交わる場所で、いくつもの謎が混沌のビジョンとなって読み手に襲いかかる。凄まじい熱量、凄まじい破壊力。理性的に真摯に狂うもの。感情的に無責任に狂うもの。それでも…死者とともに彼等は生きる。生き続ける。2019/01/23
らむり
35
これは面白かった♪。頭のコブの中に、双子の弟(兄?)の体の部位が入った状態で産まれて来た、先天奇形者ボズの数奇な人生のお話。黒グロと深みのある世界に、ページをめくる手が止まりませんでした。ラストも良かった。2013/03/03
キキハル
29
「生まれながらに彼は墓だった」意味深な出だしにつかまれて、もう引き返せない。彼の頭の大きなこぶには、生まれなかった兄弟の死体が詰まっているのだ。ボズという異名をもつ男の来歴が、日本や東南アジアの暗黒の歴史とともに詳細に語られる。その壮絶な生きざまにヤワな脳天を打ち抜かれてしまう。ボズの謎が私には謎で、ヒョーゴが彼にこだわる理由も異様だ。残虐なシーンも多いが、最後は安堵の溜息が出た。装幀の美しい濃厚な一冊。2013/02/24
くまたす
27
★★★★★胎内で死に別れた兄弟の死体を頭のこぶに納めた、名も無き男(墓頭=ボズ)が生きた数奇な人生の物語。毛沢東率いる大陸や東西冷戦に振り回された東南アジアを舞台に、ボズは頭の中の死体を出す謎を探し続ける。とんでもない超大作。著者が命削って書いたのが分かる。残酷で正視できない酷い表現も多かった。でもどの文も一節一節が意味を持ち、物語を濃くしている。物語を埋め尽くす、殺戮、暴力、混沌。死屍累々、そして流される血。どこまでも暗い物語なのに、見方を変えると大切な誰かを思う、暖かさが詰まった物語でもあったりする。2020/10/19