内容説明
当たり前の幸せは、当たり前そうに見えれば見えるほど手に入れにくいものなのです。うまく気持ちを伝えられない不器用な男女、倒産寸前の店を抱える夫婦、離婚してひとり暮らしを始めた女性…ひとつの町に浮かび上がる、著者新境地のハートウォーミング・ストーリー。
著者等紹介
伊藤たかみ[イトウタカミ]
1971年兵庫県生まれ。95年早稲田大学政治経済学部在学中、『助手席にて、グルグル・ダンスを踊って』で第32回文藝賞を受賞し、デビュー。2000年『ミカ!』で第49回小学館児童出版文化賞、06年『ぎぶそん』で第21回坪田譲治文学賞、同年『八月の路上に捨てる』で第135回芥川賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
176
読メで見かけた作品で、初読みの作家さんでした。読みやすく、人物のココロの動きや表情さえもわかりやすく感じる描写は好みの作風です。本作は「セージ」とあだ名が「虫」というさえない男女を中心に他の人物たちが微妙にリンクする連作集で、リンク具合が絶妙にえがかれています。最初はどちらもメンドクサイキャラだと思っていた「セージ」と「虫」ですが、なんとなくお互い話すうちにゆっくりながら心を開いていく距離感もまた絶妙な描写です。時が経つにつれ2人の間の空気が温かく変化し、読んでいる側にもホンワカと伝わってくる感じでした。2015/12/26
ケイ
120
何となくひかれる話たち。男女の距離が少しずつ短くなっていく様子が、まどろっこしくもなく、じんわりと胸の底を温かくさせる。ただ、一番最初の飲み会の席で虫壁とセージに持った印象が、それ以降の二人のイメージとあわなく、そこが残念だった。案外普通の二人じゃないかと思って…。子供ちゃんの喪失を徐々に癒す二人や、カレーの話をする二人の短編が一番好き。2016/05/16
おくちゃん🌹柳緑花紅
99
下井草が舞台の短編連作。誰かと暮らすということは、難しい。そして嬉しい。誰かが私を気にしてくれて、私を見ていてくれるってことはそれだけで。。。遠慮しすぎてすれ違う心。ズケズケ言いすぎて離れる心。少しずつ少しずつ行ったり来たりしながら近づいてゆく心。相手がいるから普段気づかない自分に気づく。やっぱり誰かと暮らしたい。と思った瞬間、一人暮らしの義母を想った。2015/03/01
taiko
89
同僚同士の知加子とセージが愛を育む様子と、同じ地区に暮らす人たちのエピソードを交えた連作短編集。二人の様子がとっても良いです。地味めだけど、微笑ましい。セージに対してだけ強気でちょっとわがままな知加子が可愛いし、鈍感だけど寛大なセージが頼もしい。これからの2人をもっと見たいなと思いました。間に織り込まれた別の夫婦のエピソードも、切ない話ばかり。どれも好きでしたが、「サッチの風」が良かった。著者の作品2作目。大好きな作家さんに決定です。2016/02/07
アメフトファン
61
セージ君と虫さんが恋に落ちるまでを緩やかにのんびりと描かれてます。一目惚れとか大恋愛とは違いますがお互いの好きなところをちょっとずつ探していく恋愛は末長く続きそうですよね。アンドレの話も良かったです。何だか正樹を自分と重ね合わせてしまいました。初読みの作家さんでしたが穏やかな気持ちで読むことが出来て良かったです。2014/08/28