内容説明
東京近郊、農業と漁業の町、崎浜。二月に花の咲きほこる常春の集落で、重症化するインフルエンザ患者が続出?現場に入った国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員・島袋ケイトは、ただならぬ気配を感じていた。果たしてこれはインフルエンザなのか?ケイトは、総合病院の高柳医師、保健所所員の小堺らと、症例の多発地区に向かう。重症患者が爆発的に増え、死者が出はじめても、特定されない感染源。恐怖に陥った人々は、住民を感染地区に閉じこめ、封鎖をはじめた。ケイトは娘を母に預け、人類未到の災厄を封じこめるため、集団感染のただ中に飛びこんだ―。
著者等紹介
川端裕人[カワバタヒロト]
1964年兵庫県生まれ。東大教養学部(科学史、科学哲学)卒。日本テレビで科学技術庁、気象庁担当記者を経て、98年『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モルク
102
14年ほど前に書かれた本とは思えないくらいリアルな感染パニックもの。突然発生した疫病、インフルエンザと思われていたものが急激に悪化、重い肺炎そして脳炎までおこしてバタバタと死んでいく。高齢者のみならず持病もない元気な壮年そして医療従事者までも…。感染源を特定しその「元栓を閉める」役割を担ったのが主人公島袋ケイト。コウモリか、鴨かはたまた…。マスク、医療従事者の過労や疲弊、病床不足、罹患者や地域の差別など現在のコロナでの状況と相まって興味深かった。2021/04/29
ケイト
63
500ページに渡る話には苦戦した。これが10年以上前に書かれていた事に驚いた。小さな町で謎の感染症が発生。胸を掻きむしり爆発的熱傷に倒れる人、人、人。陰惨な遺体に唖然!まるで今のコロナ禍のようで、現場の医師・看護師の奮闘ぶりに圧倒される。疫学フィールドという調査員の地道な情報収集「元栓を閉める」と言うケイトの言葉が印象的だった。初期対応の早さが大事なんだと痛感した。2021/05/22
まつうら
61
原因不明の肺炎で重篤者という一報をもとに、感染源を突き止め、感染拡大を防ぐ使命を持った疫学者たちの戦いを描く。事実をもとに積み上げた仮説をひとつひとつ検証していく様子は、医療関係者というよりも刑事が捜査をしているような仕事ぶり。時間とともに罹患者が増えていく中で、当初感染源として疑ったコウモリは子供へと変化し、もしかしてバイオテロかもという可能性が膨らむと、パンデミックの緊迫感が高まってくる。高島哲夫「首都感染」のようなロックダウンの危機を感じながら、なんとか平和に終わったラストシーンに安堵感。。。2023/06/21
kei302
55
感染症小説。活躍するのは疫学チーム。医者や病院関係者・政治家や政府関係者ではない。今、読んでおきたい一冊。急速に悪化し、重症者が増え、医療崩壊。そして、若年層の無症状。感染者への差別。現実と重なる部分が多い。劇的な展開や感染症から救ってくれるヒーローは現れない。人々はじっとして我慢している。医療従事者を守る対応を早急にと願わずにはいられない。 2020/04/17
ゆみきーにゃ
42
《図書館》あっとゆう間に読了。疫学探偵ものシリーズ出たら面白いだろうな〜。2014/05/04