内容説明
「ジョンを背負って7000メートル」12月9日。構成作家のボクは、ジョン・レノン追悼番組で使った彼の巨大な写真パネルを、たった一人で六本木から新宿ゴールデン街の店まで約7キロも歩いて運ぶことにした。「ナッツ」仕事もお金もすべて失った中年男・里村のもとに、かつて自分の店に出入りしていたデリヘル嬢の奈々が訪ねてきた。奈々は癌にかかって死にかかっているハムスターを里村に預けにきたのだ。「プリズムの記憶」ライターの洋介とフォトグラファーの麻里は、雑誌の仕事を通して出会い、やがて深い関係になった。そんなある日、洋介は玉川の多摩水道橋で待ち合わせをしたが、麻里は現れなかった…。喪失の悼みを抱え、もがき苦しむ人間を優しく包みこむ、静かな救済の物語。
著者等紹介
明川哲也[アキカワテツヤ]
1962年6月17日生まれ。早稲田大学卒業後、フリーライター、放送作家などを経て、90年、ドリアン助川の名で「叫ぶ誌人の会」を結成。バンド活動のほか、パーソナリティーを務めていた深夜ラジオでは、若者から多数の人生相談を受け、注目を集める。99年解散後、2000年から02年、ニューヨークに在住。03年から明川哲也の名で小説を中心とした創作活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
123
表紙のイラストと詩的な題名に惹かれて手に取った本。読んで良かったと思う。さすがは『あん』の作者だ。3つの中編に出てくる登場人物達は、いずれも苦境の中にいる。どうしようもない現実に直面しながら、それでも絶望のどん底で微かな光が見えてきて、救われた気持ちになる。「ナッツ」が私のベスト。癌になっても懸命に生きようとするハムスターを、作者は慈しみを込めて描いている。ハムスターの呼吸の音は、全てを失ってしまった主人公の男を励ます。どんな存在もつながっていて、そのつながりが人を癒すと感じられる物語だった。2016/11/20
優希
98
淡々とした光のあたらない世界が広がっているようでした。絶望や苦境の中にいて、何とも言えない現実に向き合っているのが刺さります。それでも、かすかな光が差し込んでくるのが見て、救われたような思いがしました。詩的でありながらわずかに差し込んでくる希望が印象的です。2017/10/24
chimako
81
喪失の果てに身の置き所を失くした3人の男たち。一人はジョン・レノンの巨大なパネルを背負って7kmの道のりを歩く。途中、殴られ蹴られジョンとともにボロボロになりながら歩き続ける。一人は親の保険金ではじめた店を潰した。大量のナッツだけが残される。そこに癌で余命幾ばくもないハムスターを連れた女がやって来る。もう一人は女と約束した多摩川の橋の上で佇む。待っても待っても女は来ない。突然欠落した2年間が戻ってくる。…どの話も救い様のない現実に「世界の果て」から一条の光が射して物語を終える。好みは「プリズムの記憶」2016/10/28
mi2
3
辛い境遇や、過去の出来事から逃れられない苦しさは、胸がつまりました。ただそんな状況の中でも人の温かみや微かな希望が現れ心が温まります。良質な物語はただセンセーショナルなだけでなく、生きていく糧をあたえてくれるものだと思いました。2010/03/03
びいの軽太
2
タイトルにひかれた。ナッツ、プリズム、ジョンの順によかった。 昭和の香りのする、光の当たらない世界は、詩的だし 演劇的だが、何となくおぼろげな希望がみえるのもいい2015/09/13
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