内容説明
応化十六年。内戦下の日本。佐々木海人大佐は孤児部隊の二十歳の司令官。いつのまにか押し出されて、ふと背後を振り返ると、自分に忠誠を誓う三千五百人の孤児兵が隊列を組んでいた。そして、戦争を継続させているシステムを破壊するため、少女だけのマフィア・グループ、パンプキン・ガールズをつくり、欲望と感情の赴くままに世渡りをしていく月田椿子。少年少女の一大叙事詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
45
応化戦記の2作目。小さい頃は仲間を信じて、生き抜く為だけに戦っていればよかった。でも、内乱における主要勢力の指導者となっていくカイトと椿子は、もうシンプルで綺麗な夢だけを見ることを許されなくなっていく。孤児部隊設立時からの戦友である俊哉との対立、部隊内のゲイ兵士の扱いが大きなテーマになっている。この巻のカイトの苦悩は、多くの少年が社会に出て行く時に体験する苦悩でもある。俊哉に反乱を促した女子大生の「自分の信念を人に語ると、罪になるの?」という問いに「おれたちは戦争をしてるんだ」とだけ答えるカイトが切ない。2021/07/04
宇宙猫
22
★★★★ 主人公海人が全体を見渡せる立場になり、話の視点が戦闘・戦術から戦略へ、外部との交渉も高いレベルに変わり飽きない。力で思い通りにできると欲望がむき出しになり、マイノリティに対する差別など激しいものになっている。そんな中で暴走、分裂、裏切りなどに苦悩しながら司令の勤めを果たす海人から目が離せない。2023/07/04
さゆ
19
あと30年くらい経ってから、なかば廃墟と化した暗闇の中で、この本のことを思い出し、苦笑しながら「海人の小説の通りになっちゃったんだな」って、思う日が、来ないとも限らない。という恐怖感。海人が、あの時の自分の決定が、この事態を招いたのかと考え、でも、あの決定しかできない自分を認めるのが、海人らしく、嬉しくもあり、そして哀しいなと思った。2011/03/02
Toshi
11
打海文三による「応化戦記シリーズ」2作目。主人公は成長し、グローイングアップストーリーから、より戦記ものの色彩が濃くなってくる。また戦いは、領土から、ゲイや女性、外国人に対する主義を巡り大きく動いていく。その中での友の裏切り。この戦争に終わりはあるのか。2023/06/09
しろ
8
☆7 読みだしたときは、カイトはもうある程度の地位まで来てしまったしそこまで動きがないから魅力は減ったかな、と思ったけど、そんなことはまったくなかった。司令官という立場やいろんな人々との関わり合いでの苦悩に揺れながらも、カイトらしさを失わずに生きていく姿には胸を打たれる。秩序が無くなり人間の欲望が露見する状況で生まれる差別、やはり秩序がないとより愚かになってしまうのかもしれない。そんな悲惨な世界でも打海さんのユーモアにはクスッとさせられる。それがなければ読み切れないかもしれない。2010/09/14