内容説明
NY、ソーホー。この街に降り立った大学生・オサムは、伝説のアーティスト・ネモの超絶パフォーマンスに心奪われる。仮面に覆われた倒錯的世界、現実ともつかぬ生活、未知の魔力がオサムを変容させてゆく。自分でない、何かへ―。
著者等紹介
山之口洋[ヤマノグチヨウ]
1960年東京生まれ。東京大学工学部卒業。電器メーカー等の研究所勤務を経て、作家に。98年『オルガニスト』で日本ファンタジーノベル大賞。『われはフランソワ』で直木賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒダン
12
『オルガニスト』のような力強い作品を期待して手にとったが期待通りの好作だった。燻ぶっていたオサムは全生活がパフォーマンスであり人前では常に仮面を被っているという”トータルパフォーマー”ネモバンドに加えてもらうことになる。感情をこめずに高音も低音も自在に歌いこなすネモをはじめ、ネモバンドの仲間は魅力も謎も多い。あらゆる絆を断ち切り、生と死という平行線が交わるバニシングポイントを目指して生きる、そんな音楽に魅せられた者の狂気が文章に滲む。シュウは愛だけでも、憎しみだけでも越えられない地点に立っていた。2016/06/08
ホレイシア
4
前半、ロックに詳しくないので外したか、と思ったら、後半は「オルガニスト」のときの雰囲気が出てきてグッド。2008/12/14
Maki Uechi
2
★★★★☆ 2015/10/08
読書国の仮住まい
1
大学であちこちのバンドを渡り歩き、その度合わずに離れるを繰り返している井野修。 ある日クラウス・ニモなるバンドの音源を聴き衝撃を受ける。 いてもたってもおられずニューヨークまで直接聴きに行く。 彼はステージの上だけではなく、生活全てを演出としているトータルパフォーマーであった。 彼らに誘われてシュウ・イーノと名を変え仲間に加わる。 ある程度理由があったとはいえ、いきなり尋ねてきた一般人を誘うだろうか? ドラッグ、セックス、整形手術。 人と違うことを表現するのに、それらが必要要素なのか? 疑問が頭に残る。2021/02/14
FK
1
佐野洋の推薦本。私にとってはとても不可思議な世界を描く。原題には「トータル・パフォーマー」とフリガナが振られている。/何のため? 芸術のため・自分自身の満足のため。はて、何のためにそこまで徹底しようとするのか。そうせざるを得ない・そのように突き動かす何か、があるのだろう。/また昔から問題とされていることが出てきている。つまり薬物を使用した上で実現される芸術というものの価値について。本当のところ、どこまで薬物が影響するのだろうか。単に脳の桎梏を解き放つだけで、薬物が何かを創造するわけではないとは思うが。2005/11/28