内容説明
機械とヒトの千夜一夜物語。数百年後の未来、機械に支配された地上。その場所で美しきアンドロイドが語り始めた、世界の本当の姿とは。
著者等紹介
山本弘[ヤマモトヒロシ]
1956年京都府生まれ。1987年、ゲーム創作集団「グループSNE」の一員となり、作家およびゲームデザイナーとしてデビュー。『時の果てのフェブラリー 赤方偏移世界』『ゴーストハンター』シリーズなどのジュヴナイル作品で人気を博す。2003年、本格SFにして著者初のハードカバー『神は沈黙せず』(角川書店)を刊行、同作はSFファンの話題をさらい、日本SF大賞候補となった。作家活動以外にも、クラシックSFアンソロジーの編集、トンデモ本を研究する「と学会」の会長など、その活動は多岐にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
224
感動した。山本弘さんの最高傑作かもしれない。小説の中に短編小説が含まれ、それらが仮想世界の話になるので孫レベルまで存在する入れ子小説。玉手箱を貰ったような嬉しい気分。ユートピアの様なディストピアは色々あったがディストピアの様なユートピアは珍しい。absintheも人工知能と人間の差異は本能だと思っており、人間はその本能ゆえ大局的に正しい判断が出来ないと思っていた。人間と人口の生命、その違いについての指摘もそれぞれ正しかったように思う。2020/10/08
mike
76
苦手なSF。テクノロジーも科学も私には難しくて、とても高評価の作品だが読むのに苦労した。でもすごいスケールの話だという事は分かる。山本さんが20年近く前からAIやアンドロイドの登場を歓迎しながらも懸念を抱いていた事。そして我が子の未来が、それらと人間が共存できる愛ある世界であってほしいと心から願っている事。そんな思いがストレートに伝わってきた。アンドロイドが人間を痛烈に批判した数々の言葉にはぐうの音も出ない。介護ロボットを扱った「詩音が来た日」が1番心に染みた。2024/05/20
ゆかーん
73
近い未来、人類が滅びてしまった時、後に残されるのがAIロボットだとしたら…。人間が作ったロボットが、世界を淘汰するという姿を想像するのはなかなか難しい。でも、フィクション小説を読み込んで、新たな世界の完成を想像できるようになったなら、人類は意外と簡単に人間はロボットを受け入れることができるかもしれない。ここに登場するAIロボットは、人間に忠誠を誓い奉仕する指名を受けたもの。人間の未完成な部分を、ロボットがカバーすることは素晴らしいが、それが成功したならば、そこに人間の居場所ははたして存在するのだろうか。2018/05/18
禿童子
44
時は未来。美しいアンドロイドのアイビスがアラビアンナイトのシェヘラザードのように人間と人工知能(AI)の物語(過去のSF)を語り続ける設定(つまり物語の物語)で、おのずから山本弘の短編集の趣向でもあるが、粒ぞろいの作品ばかりでうならされる。特に介護アンドロイド詩音の語る「AIから見た人間観」は出色の出来。過去のSFへのオマージュというに留まらない。2006年の本だけどAI物のSFでは古典に数えてもよい名作だと思う。2020/09/14
あみやけ
40
面白かったし、考えさせられました。最近、AIに関する小説を読んだり、チャットGPTを体験したりで、これまでには読まなかった分野ですが、とっても興味深かったです。不完全なヒトが欠陥が少なく完全に近いAIを作ってしまい、未来はどうなるのか?心配もやはりありますが、もうそういう時代に入っているのかもしれません。20年くらい前に書かれた短編も入っていますが、よく考えられています。ただ、現実がこの物語を越えている部分もすでにあります。真剣に考えていかないとですね。ただ、一段落が長く読みにくかったです。★4.72024/03/16