内容説明
朝廷と幕府がせめぎあう、きな臭い鎌倉時代―。棄民が溢れ、戦火の予感が色濃い京の都に、異形の邪教集団・真如宗が突如現れた。五感でとらえ得る現世をすべて幻とみなし、他人はもとより自らの命すら塵のように捨て去るその集団の頭目は、釈迦の末裔・五十二代仏祖を名乗る、翳覚。父母を眼前で殺され、自らも師匠を殺め、死を究めた末に、仏の名の下に傍若無人に命をほふり続ける彼は、稀代の悪か、真の宗教者か―?この仏教の危機に、修行を重ね今は静かな瞑想の日々を送る明恵上人が敢然と立ち向かう。究極の生と死が背中合わせになった時代を舞台に、二人の宗教者の戦いを通じて生死の意味を問う、苛烈極まる問題作。
著者等紹介
野火迅[ノビジン]
1957年東京生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、出版社に勤務。長く雑誌、書籍の編集にあたる。その後執筆活動に入り、2002年、季刊「小説トリッパー」に「聖徳の息子」を発表。日本の古代史・中世史を独自の視点から捉えなおし、斬新な歴史小説の書き手として期待されている
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