内容説明
神に選ばれし万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼を取り巻く人々の目を通してその叡智と孤独を描き出す、著者渾身の大作。
著者等紹介
服部まゆみ[ハットリマユミ]
1948年、東京生まれ。現代思潮社美学校卒業後、加納光於版画工房にて銅版画を学ぶ。1984年、第10回日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞を受賞。パリで行われた授賞式の思い出を小説にした『時のアラベスク』で、1987年、第7回横溝正史賞を受賞した
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感想・レビュー
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青蓮
65
「万物の天才」と謳われたレオナルド・ダ・ヴィンチを彼を取り巻く人々から描き出した大作。登場人物が多くて読むが大変でしたが、なんとか読了できました。フランチェスコの傲慢さとレオナルドへの強烈な思慕は読んでてちょっとうんざり。身分の違いとはいえ、ジャンが不憫でした。彼が抱えてた嫉妬や憎悪に妙に共感。レオナルドは肉体は伴わないにしろ、美しいサライやフランチェスコを愛していたように思います。決して許されない愛を作品として昇華していたのでしょうか。そんな彼の心の裡は孤独だったのかもしれません。2015/09/07
優希
40
面白かったです。レオナルド・ダ・ヴィンチのオマージュ的作品なんですね。ユダは、レオナルドのまわりにいる人々の誰なのか。信仰と裏切りが渦巻く物語とも受け取れると思います。ユダが誰に対する裏切りとは何かも考えさせられますね。人間同士の駆け引きの物語と言えますね。2024/01/21
eriko*
14
ダビンチを崇拝する弟子から見たダビンチ像だったので、本人の葛藤や孤独は想像するしかないのですが、もうちょっと人間らしく、ドロドロした部分も見たい気がしました。面白かったですけどね。2017/09/28
Cinejazz
9
イタリア・ルネサンスの天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519年)の後半生に、貴族の御曹司フランチェスコとその従者ジョバンニ、レオナルドの才能に嫉妬する修道士パ-オロ-を絡め、目くるめく幻想の筆致で謳いあげたレオナルド追憶の異色作。レオナルドが世を去った後、寵愛を受けた弟子サライとの秘密めいた関係が詮索され、「聖ヨハネ」や「貴婦人の肖像画〝モナリザ〟」のモデルの謎と絡み合う。レオナルドを師と仰ぐジョバンニは、「最後の晩餐」の使徒ユダと同様 “不肖の弟子”と自身を悔悛し、師を偲ぶ姿が痛ましい。2019/12/08
みそさざえ
6
若桑みどり氏が、ダ・ヴィンチとミケランジェロのキリスト教や生き方に関する違いを入門的に取り上げているのを読んで、この有名なルネサンスの芸術家たちの背景を何も知らないことに思い当たった。小説から入るのが好きなのでこの本をとりあげたが、大変興味深かった。特に、よく弟子の名前として聞くサライやメルツィというのがこのような人間像として表現されていることで、より現実味を持ったイメージが作られた。この分野を多角的にもう少し深めたい。2016/04/19