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内容説明
所田三郎は狭く暗いトンネルの中を、物言わぬ軌条に優しく触れながら、一人歩いていた。やがて前方から、悲鳴のような汽笛が聞こえてくる。待避用の穴に潜り込み、三郎は轟音を立てながら走る機関車をやり過ごす。そしてトンネルへと立ち戻った彼が目にしたのは、線路に横たわる若い少女の姿だった―。時は昭和初期。線路を守る保線手として、二十年以上ひたむきに働いてきた純朴な男と、世間知らずの美しい少女が紡ぐ、ほのかなロマンス。
著者等紹介
峰月皓[ホウズキコウ]
1981年生まれ。『君に続く線路』でデビュー。横浜市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
80
息子からの借り本。ふんわりと温かい気持ちになれる本。世間知らずのお嬢様と中年の保線手。2人が一緒に過ごしたのは、たったの5日間。お互いのほのかな恋心が成就する事は、あり得ない。だから切ないのだけれど、エピローグの「保線手の祖父」の言葉に、劇的な後日談があったのでは?と勘繰りたくなってしまった。「線路は、街と街を結ぶだけではない。人と人を結ぶものでもあるのだ。」子供達と離れて暮らす私の胸に響く言葉だった。2014/03/03
coco夏ko10角
27
昭和初期。42歳の純朴な保線手・三郎さんと20歳の世間知らずなお嬢さん・櫻子の数日間のロマンス。線路のことはよく分からないので恋愛の方ばかりで読み進める。終章からいくとその後の二人はそういうこと…でいいのよね?あとトメさんについてもっと情報が欲しかったなぁ。2015/08/17
た〜
13
幾人もの登場人物の成長記であり純愛の物語でもある。心理描写が秀逸で感情移入しやすい。ところで女傑二人の謎が残されちょっと気になる2013/04/01
日奈月 侑子
10
実は表紙に惹かれて買ったクチだったので、最初の方は、列車の知識が皆無もあって入り込むのが難しかったのですが、読み進めていくと面白くなってしまいました。 三郎の温厚で芯が通った姿勢が魅力的でした。櫻子の口調のキツさというか、自衛の為の攻撃的な態度があまり好きになれなかったのもあって、三郎の好感度は最初から高かったような気がします。櫻子の言葉に怒るでもなく、真摯に向き合う様が格好良い。その真摯さ故に、最後はちょっとほろ苦い感じになってしまっていたけれど。多分本人は悔やんでないだろう。だから切ない。2013/10/29
sarie
8
時代は昭和初期のお話。線路を守る保線手一筋に生きる純朴な40男と、世間知らずなお嬢様。彼女の成長物語であり、ほのかな恋の物語でした。ラストははっきり描かれず読み手に想像させる終わり方。 謎だらけで終わってしまったけれど、だからこそこの物語は良いのかもしれない。 楽しめました。2015/12/05