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出版社内容情報
空に還るたましいは、大切な想い出の色に染まるという。多彩なたましいの瓶が大切に保管された研究所には、今日もまた色々な事情を抱えた人々が訪れる。色とりどりの瓶に込められた最後のメッセージを求めて――。
内容説明
色とりどりの瓶が並べられた、まるで博物館を思わせるような研究所。ここでは空に還るたましいを、ガラス瓶に保存してくれる。そして不思議なことに、瓶に閉じ込められたたましいは、人生で最も鮮烈な、想い出の色に染まる。だから、この研究所には想いと事情を抱えた人々がやってくる。たましいの色に込められた、一番大切な人の、最後のメッセージを求めて。「ついに、来てしまったわ。―昌樹、許してくれる?」今日もまた一人の女性が、願いを胸に研究所を訪れ―。
著者等紹介
渡来ななみ[ワタライナナミ]
「天体少年。さよならの軌道、さかさまの七夜」(メディアワークス文庫)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まきこ.M
50
透明な瓶の中に、たましいを入れて大切な人に持っていてもらう。魂は何色だろう。生きていく上で記憶が織りなすもの。今気付いていないかもしれない。想い出の匂い、感触、そして色、そんな目に見えない綺麗なものが描かれている。音楽の表現が素敵。『その音色はまさに天空を移動していく月の光のようだ。珠玉の旋律は一編の詩のように、水面のように揺れて、さざめき、たゆたい、留まることなく、なめらかに、その想いを滑らせていく』世界は単純にくくれるようなものじゃない。たましいの物語にそっと触れて心の傷を優しさに変えてー2015/06/15
佐島楓
46
表紙の印象通り、悲しいけれど、透明感があって、ライトノベルとしては異色の作品かもしれない。「死とそののち」という重いテーマを題材にしているからだ。ただ、物語の主人公はあくまで生者。閉じられていた心は、人とのかかわりによって開いていく。私だったら、この主人公の境遇に置かれたら、どうするだろう? そう自問せずにはいられなかった。2015/07/11
菅原孝標女@ナイスありがとうございます
35
亡くなった人間の“たましい”の色はその人間の想い出に基づいた色をしている。ライト文芸らしい優しい物語だった。続きはないのかな。2025/04/01
まりも
35
魂をガラス瓶に保存する事で故人の最後のメッセージを残すことができる研究所を舞台にした物語。不思議な雰囲気のある1冊ですね。物語の結末も含めて、儚くて触れたら壊れてしまいそうな美しさのある話だったと思います。残された人の為に個人の魂を手元に残す事の是非を作中で結論づけず、様々なあり方を示す事で終わらせたからこそ、何とも表現しにくい不思議な余韻を残す物語に仕上がったんだと思います。モヤモヤ感は残りましたが、たまにはこういう作品もアリですね。次回作も期待してます。2015/05/26
よっち
32
亡くなって空に還るたましいをガラス瓶に保存してくれる高瀬命髄学研究所に、自らもガンに冒されている和葉が訪れる物語。生きていく意味を見いだせない、大切な人を失って宙ぶらりんな気持ちに整理をつけることは簡単ではないですが、研究所を訪れる人たちと出会い、その想いに触れることで気づけることもあって、何より自分自身が死と向き合って前を向くことが大事なんですよね。話の展開として最後に明らかになった真実をそこに持って来るべきだったのか疑問は感じましたが、亡くなった人とどう向き合うべきかいろいろ考えさせられるお話でした。2015/05/26