内容説明
31歳独身の「おれ」は相棒に言われるがままに、白タクならぬ白バスで無認可の観光ビジネスの片棒を担いでいる。ある日、相棒が企画した「清貧ツアー」(聞こえはいいが、おんぼろバスで婆さんたちを山奥に連れていくツアー)で、客の1人が失踪。「あれは姥捨てツアーらしい」という噂が瞬く間に広まったが、皮肉なことに、今度は150人もの婆さんがツアーに集まった!『床下仙人』でブレイクした著者が、現代をシニカルに描く。
著者等紹介
原宏一[ハラコウイチ]
1954年、長野県生まれ。早稲田大学卒業後、コピーライターを経て、97年『かつどん協議会』でデビュー。鋭い風刺とユーモアで描く独特の作風で、9作品を刊行。2007年、ある書店員の熱心な応援で、01年に文庫化した『床下仙人』がブレイク、ベストセラーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうこ
47
最近お気に入りの原さん。話の着想は見事!面白いアイデアだなぁ。現実的にはあり得ないだろうけど世のお年寄りが少なからずこんな事を悩んでるのでは?と思ったり。話の展開は早いのでサクサク読了!2014/07/10
ジュール リブレ
36
すっかり忘れていて再読。姥捨山でツアー客が行方不明に。 この頃の原宏一さんの小説の根底のグレーな色は、なかなかなものです。万人受けはしないけど、よく描ききったなという感じで。2019/09/14
はつばあば
32
私達老人の実態をよく把握した文章が怖い。若い時に読んでいたら又違った感想もあるだろうが・・・。これは息子と母の繋がり。息子は母親にとって最高の恋人と私の友人は惚気けたが、その間に嫁が介在。長年、夫をたて子供に尽くし・・・よく分かる。嫁もいずれは婆になる。それを忘れているだけや。子供に捨てられたなんて思う事ない。気持ちの持ちようや。息子と母はどこかで繋がっている。その息子に「母はあんたを捨てる」と言ったら、今の社会の現状がちょっとは変わったかな。・・・残念ながら婆には娘。同性には通じませんわ(^_^;)。2014/07/27
Walhalla
26
ドキッとするタイトルですね。 無許可の白バスツアーを描いた作品ですが、原宏一さん独特のシニカルな面白さがありました。しかし、ただ面白いだけの作品ではありません。 「姥捨て」という言葉が古くから民話として各地に残るほどに、お婆さんたちの「シャレとマジ」は、単純に区別できるものではないのですね。 あと、松代のくだりは、とても勉強になりました。2016/12/20
うめ
26
人から、生き甲斐、を奪ったら、諍いが起きたり生きる気力を失わせたりするのだと思う。親孝行って、親に色々”してあげる”のではなくて”信じて頼る”事かもしれない。身近になればなるほど、人は相手を軽く見がちだから。あと、親になっても、子どもとたくさん触れ合えるのは、本当に短いものなのだなとしみじみ。だとすれば、子どもを持てば、人生のほんの10年ばかり、一心に捧げるのも悪くないと思うし、子どもを持たないのなら、子を持つひとが、子を一番に考えて、許された短い時間をたくさん触れ合える、支えになれたらなと思いましたよ。2016/06/17