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闘争領域の拡大

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  • サイズ B6判/ページ数 182p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784047914872
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

闘争領域。それはこの世界、自由という名のもとに繰り広げられる資本主義世界。勝者にとっては快楽と喜びが生まれる天国、敗者にとってはすべて苦しみ、容赦ない攻撃が続くシビアな世界。日々、勝者か敗者かの人生が揺れている微妙な三十男の「僕」と、生まれついての容姿のせいで女に見放されている、完全な敗者のティスラン。彼らにとって人生は苦々しく、欲望はときに拷問となる。そんなふたりが出会ったとき、奇妙で哀しい、愛と人生の物語が生まれる―。現代フランス文壇で類を見ない才能を放つウエルベックの、若き哲学が爆発した初期の傑作小説。

著者等紹介

ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル][Houellebecq,Michel]
1958年フランス海外県レユニオン島生まれ。国立高等農業学校卒業。20歳の頃より詩作活動を始め、91年にH・P・ラヴクラフトの評論と初の詩集『Rester vivant(生きて在りつづけること)』を発表。続く詩集『La Poursuite du bonheur(幸せの追求)』がトリスタン・ツァラ賞を受賞する。94年に小説第一作となる『闘争領域の拡大』で、その特異な才能と世界観が注目を浴び、カルト的な人気を博す。98年に発表した初の長編『素粒子』はフランス文壇を揺るがせる事件といわれ、30ヶ国で翻訳された。その後写文集『Lanzarote(ランサローテ)』を経て2001年に『プラットフォーム』を発表。期せずして現実の事件と重なったことで、裁判沙汰になるほどの驚異的な論争を巻き起こした。現在フランスで、そのすべての言語活動が注目されている作家

中村佳子[ナカムラヨシコ]
1967年広島県生まれ。広島大学卒。翻訳者
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

66
ウエルベックの小説としてデビュー作にあたる。2作目の『素粒子』は、その4年後である。闘争領域とは、経済の自由化とセックスの自由化を指し、あらゆる世代あらゆる社会階層に向けて拡大している。これが闘争領域の拡大である。僕らの社会においては一つの差異化システムである。この世界の仕組みは痛々しく、生きづらい。何割かの人間はその両方で勝利し、何割かの人間はその両方で敗北する。これがいわゆる「市場の法則」である。この作品は、小説としての完成度からすると物語としての要素が弱い。両方持たぬ者はどうしたらいいの。2015/09/17

zirou1984

62
明晰な知性というのは決して人を幸福にしない。クンデラやウェルベックを読んでいるとそんな目を背けたくなる事実をつくづくと思い知らされる。処女小説である本作で描くのは文明の進歩によって生まれた資本主義による自由化のイデオロギーが恋愛(セックス)に介入することで、逆説的に非文明的な万人の万人に対する闘争状態から人は逃れられなくなってしまう悲劇である。所詮愛は、文明とはフィジカルエリートに敗れた者たちの慰み物なのだろうか。ウェルベックはそうしたギリギリの所で愛を、弱さを静かに肯定する。それも哀しくもとても優しい。2015/06/01

ヘラジカ

33
フランス人作家ミシェル・ウエルベックの処女作品。シニカルでありながら柔らかさのある語り口で、資本主義社会の中で閉塞感を抱いている青年を描く。特に起伏がある物語ではないが、独特で鋭いユーモアのセンスに引きずられて一気に読み終えてしまった。エスプリというのだろうか、とにかく文章の締め方がさりげなく冴えている。そしてユーモアにつきものなのがペーソス、冷静な観察眼を持っていながら破れかぶれな主人公の生き方には、ため息がでるような哀愁が漂っていた。声を上げて笑いながらも胸に痛みを覚えるような小説。とても気に入った。2015/03/04

Tonex

28
初ウエルベック。小難しそうなタイトルだが、読み始めたら引き込まれた。フランスのモテ格差を描いた負け組小説。非モテ生きるべきか死すべきか。▼ダメ人間の描き方がうまい。人生の敗者に対する視線がやさしい。2016/03/04

わっぱっぱ

27
経済(セックス)の自由化とはすなわち闘争領域の拡大である。勝てば更なる闘争が待ち受けていて終わりはなく、負けても逃げ出すことはできない。愛とやらがあるとすればその闘争の果ての境地であろうが、それとて会得の保証はない。なんと馬鹿げた階級システム!自由がもたらす苦悩、本来の生殖衝動から乖離した欲求のために日々夥しい精子が虚しく排泄され秘部は固く閉ざされて錆さえ浮かぶ。それでも私たちは信じることをやめない。停滞が意味するものは死であるから。まだ愛を知りもしないのに、それが欠けてることを知っているから。2017/04/16

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