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内容説明
1787年秋、プラハ。初演日が迫っているというのに、モーツァルトはスランプに陥っていた。次から次へと女を渡り歩く色男「ドン・ジョヴァンニ」を主人公にした物語に、いまひとつのめりこめないのだ。絶対的指導者だった父の死、妻コンスタンツェとの愛の倦怠、そして創作の壁など、悩みあがき続けるモーツァルト…。それを見かねた脚本担当ダ・ポンテは奇策を思いつく。名うての女たらしであるカサノヴァをモーツァルトに引き合わせるというのだ。カサノヴァはまさに人生を謳歌する、稀代の色事師。彼は自らの遍歴をもとに、モーツァルトに愛の何たるかを手ほどきするのだが…。葛藤、苦悩の末に訪れる真実の喜び―まさにこれこそ人生。絢爛たる登場人物たちの、愛と音楽をめぐる人間オペラ。
著者等紹介
ルーデル,アンソニー[ルーデル,アンソニー][Rudel,Anthony]
ラジオのクラシック番組のプロデュースや文化施設、文化団体の監修を務める。著書に音楽関連書籍があるが、小説は『モーツァルトのドン・ジョヴァンニ』がはじめて
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
290
モーツァルトにダ・ポンテにカサノヴァ、さらには影の出演者にサド侯爵。『ドン・ジョヴァンニ』のプラハでの初演に先立つ数日間を描くこの小説。概ねは史実に基づくのだろうが、随所にフィクションがちりばめられている。その最たるものはカサノヴァの関与だと思うのだが、著者は「あとがき」でこの点に関しては強気である。真偽のほどはともかく、このことによって物語が動きやすくなったのは確か。コンスタンツェとの関係も都合のいいところだけを持ってきたようにも見えるのだが、まあ野暮は言うまい。さて、ほとんど主役級のカサノヴァだが、⇒2023/06/29
毒兎真暗ミサ【副長】
28
1787年モーツァルトが中心となり歌劇『ドン・ジョバンニ』が男達の掌で創られる。2006年ザルツブルグ公演は200年以上の時を経てモデルである「カサノヴァ」の本質を見事に体現。この物語はその魅力がモーツァルトに影響を与えたら?と緩やかに踊るもの。まさかあの人が、という展開も心擽られながら偉大なモーツァルトの心が変化してゆく様はさながら一人の男性が婀娜っぽく羽化していくよう。壮大な音楽と共に地獄落ちした影、うらはらに揺れる蝶を染めた愛情を楽譜にのせて。美しい牝馬のようにこの歌劇は時を刻み続けていくのだろう。2023/09/13
松本直哉
23
ドン・ジョヴァンニの言う自由万歳Viva la libertàの多義性。彼にとっては好きなだけ飲み食いし女を誘惑する自由だが、レポレッロにとっては主人の言いなりの奴隷状態からの自由、仮面の三人組にとっては、誘惑されようとしているツェルリーナを自由にすること、作曲家にとっては因習のザルツブルクと専制的な父からの自由、牢獄のマルキ・ド・サドにとっては性的自由。バスティーユ牢獄の襲撃の二年前の、すでに革命の不穏な空気が漂うなかでの多義的な自由が、オペラにおける複数の声の交錯のなかで、新しい時代の到来を予感させる2023/06/21
m
5
ようやく読了。オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の制作秘話のフィクション。カサノヴァがジョヴァンニに命を吹き込んだのか。サド伯爵も気になる。2023/01/03
星落秋風五丈原
5
自身も音楽関係の書を書いたり、クラシック番組のプロデュースを手掛けているアンソニー・ルーデルの処女小説。市民革命前夜の時代を舞台に、新しいオペラを作ろうと苦悩するモーツァルトの姿、またモーツァルト夫妻の愛、カサノヴァとの友情など、ドラマとロマンが溢れる、華やかなエンターテイメント。2005/11/18