内容説明
ひとは誰もが花を愛で、花におもいを託す。朝顔を植うる少女は心寂しき人、朝ごとにひらく新しい花を心待ちに、それだけを生きるよすがに…。狐の姿をした少年は花に念を凝らして、来たらぬ待ち人におもいを寄せ、傲慢なまでの気質を持つ少女は百花の王たる百合をきどる。そんなひとびとの弱みにつけこむ闇の者がいれば、救いの手をさしのべる者もある。花を守る、青葉時実の美しくも儚き幻想の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
読友さんの感想と大好きな波津さんのイラスト付きだったので読みました。『海神別荘』や『夜叉ヶ池』の泉鏡花作品のような妖と一瞬の美への讃歌に能の所作や歌舞伎の舞台、衣装などが目にも鮮や。しかし、謙虚さを装って自己中心的いい子などの何となく、嫌な女子の書き方が上手い。そして永遠姫と常世姫なんですが、必ず、戦隊モノで終盤まで残る小者臭が漂う敵側の印象がしてならない・・・。その分、フサおばあさまとの対峙で狼狽える様は笑えます。フサおばあさま、いい歳の経り方をなさっているわ~。後、コメディ・リリーフ的五助には和みます2016/06/11
えも
18
読友さんに触発され、図書館の閉架図書から持ってきてもらったら、表紙から波津さんで年齢的に恥ずかしかった…。内容は、鏡花の風情を楽しみつつも、やはり当時の萌えファンタジーノベルを思い起こさせ、電車で読みながらも挿絵のページでは本を立てて隠したりしてました。でも歌舞伎や能や、いにしえの装束の描写は作者が後書きで書いているように鏡花的で美しく、そういう教養を身に付けていたら本書も鏡花ももっと楽しめたろうなあ、と浅学を後悔している今日この頃です。2016/06/08
もぐ
10
図書館本。菅浩江さん本を追いかけて、図書館書庫からひっぱり出してもらった。昭和の香り漂う現実世界と、異なる時限に棲むモノが花を軸に交る。あるがままに生まれて、生きて、消えるものを愛おしむか。それとも美しい時を永遠に留めて愛おしむか。雰囲気は古き良き少女漫画。挿絵なしバージョンで読めばよかった。読感が完全に挿絵に引っ張られてしまって悔しい。着物や古典芸能、それらの符号的な奥深さが解るとより楽しめるのだろうな。と感じた。2022/01/18
ホレイシア
4
アイデアはよいのだが、空回りしている感じは否めない。ちょっと力が入りすぎちゃったかな?2008/05/14
朱音
3
花に心を寄せるものの「花心」(魂、ってことかな)を「永遠のものにしてあげよう」と謀って奪う(?)永世・常世(ながよ・ときよ)の姫と、それを妨げようとする青葉時実(あおばときざね)の話…というと時代がかってますか?でも舞台は現代、なんですよね。とても読みやすかった。2002/12/20