内容説明
13歳の天才少年棋士に敗れ、ひとりの男が奨励会を去った。八神香介、26歳の誕生日のことであった…。そして16年後、第5期竜将ランキング6組1回戦。将棋の表舞台から姿を消していた八神が、その沈黙を破り大衆の前に再び姿を現した。アマチュア最高位から、再びプロ棋士に挑むためであった。だが、対戦当日、相手プロは姿を見せない。それもそのはず、彼は自宅のアパートで何者かに殺害されていたのである。香車の駒を握りしめるという奇怪なダイイング・メッセージを残して…。深まる謎、息も吐かせぬ展開。ミステリーの枠を超えた最高のエンターテイメント・ノベル。横溝正史賞特別賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
92
ストーリーは抜群に面白いのに、推理小説としてのトリックがいまいちだし、登場人物が金田一とか神津とか小五郎とかでどうも集中できない。 しかも、私自身、将棋が好きなわけではないし、よくわからないので細かく書かれていてもそれほど興味がわかない。それが、トリックを解く鍵になっているのかと思っていたのだが、そうでもないようだ。 どうして推理小説にしたんだろ?う〜ん。 2020/05/12
みっぴー
59
第十二回横溝正史賞特別賞。「横溝正史賞には不向きだが、面白さは群を抜いている」と、審査員が絶賛していた本書。これはミステリ要素は根こそぎとっぱらって他の文学賞に応募してれば、間違いなく大賞。奨励会の年齢制限にひっかかり退会を余儀なくされ、真剣(賭け将棋)の世界で生きてきた男の生きざまを描いた作品。主人公の八神は、泥臭く、人間臭くあると同時に純粋で、優しくて、とても無器用。ラストの一局は、映画のワンシーンのように息を呑むほど美しかった。大賞を受賞した二作とは格が違う。素晴らしい作品。2017/11/15