出版社内容情報
とんちで知られる一休宗純。
その人生は波乱にみちたものであった。
将軍、天皇、僧侶、侍、民衆…さまざまな身分の人間の思惑が混ざりあい、混乱を極める室町時代。
高貴な身分でありながら出自を隠し、真剣に悟りを目指す一休宗純は迷いながら懸命に生きる。
矛盾と不条理と苦しみに満ちた世間のなかで、どのように生き、そして死ぬのかを考えるきっかけとなる傑作。
アングレーム国際漫画祭遺産賞を受賞し、世界からの評価が高まる坂口尚。
その遺作となる本作は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した幻の作品。
大判かつ高精細な印刷で、人生の指針を与えてくれる本作をお楽しみください。
第1巻で描かれるのは、愛する母の引き離されて仏門に入ることとなった一休の幼少期から、青年となり師匠である謙翁宗為との出会いと別れ。
内容説明
愛しい母、高貴な身分、寺の権力―すべて捨て目指すは悟りの道。一休宗純、その一生。日本漫画家協会賞“優秀賞”作品。全ページの原稿を再スキャンし、高精細に復元。美しき筆致が大判サイズで蘇る。現在と変わらない、苦しみに満ちた世界を懸命に生きる一休の姿が、“生きるとはつまりどういうことか”を示す、稀有なる傑作。
目次
第1話 とんち小僧
第2話 五山叢林
第3話 行雲流水
第4話 破れ寺西金寺
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっちも
16
謙翁と出会って五山から離れて弟子入りを決意する一休。純粋が故世俗にまみれた五山が偽物の仏教に見え、飾らない謙翁の姿に本物の仏道を見た気がしたのだと思う。謙翁の仏道は無意の実践にあるのだと思う。悟るための座禅も修行も勉強も廃して、有意の世界からの解脱のために、ただ生きる。人間らしさを無くして欲を抑制してただ生きる。仏教に何らかの価値や効用を感じるからその道に生きるのに、仏教の実践はそれを許さないところの矛盾がある。そこをどう物語するかは作者の力量だろう。漫画だからヒロイズムは多少あるが素晴らしい仏教本2025/01/08
コリエル
5
アフタヌーンで大昔に読んで、一休宗純への親しみもあってなんとなく面白いと思っていたが、こうして読み返すと室町時代の背景を挟みつつ俗と欲に苦しみながら悟りを求めて人生を彷徨する一休の姿に強く考えさせられるものがある。真善美を求むる心こそが差別の温床になっていると喝破された彼の道はどこへ続く。2024/09/18
KDS
3
可愛らしいとんち小坊主を描いたアニメ「一休さん」とは違う、実在の人物「一休宗純」の一生を描く伝記的漫画作品。小坊主時代のとんちの有名なエピソード「屏風絵の虎」はしっかり描かれているが「このはし渡るべからず」は無かった。そもそもこの小坊主時代はまだ「一休」という名ではなく「周建」と呼ばれている。その後真剣に悟りを目指さず欺瞞に満ちた五山叢林を見限ってオンボロ寺の謙翁和尚の弟子となり、名を「宗純」と改める。混迷を極める時代に、民衆のために生きる道を選んだ宗純は果たして真の悟りを開けるのか…以下次巻。2024/01/20